まつりパンライフ

家で焼いたパンと読んだ本の備忘録、愛用のキッチングッズの紹介をしています

道尾秀介「いけない」のあらすじと感想

道尾秀介「いけない」表紙画像

 

道尾秀介「いけない」について

道尾秀介著「いけない」は、2019年7月に文藝春秋から発売された本。

短編と中編が4本収録されています。

 

全251ページ。

 

初出は「蝦蟇倉市事件(1)」-2010年発売、「オール讀物」-2018年5月号・2019年3・4月号、そして書き下ろし作品が1本。

 

作品は連作のミステリーになっており、共通する登場人物もいますので、簡単に紹介を。

 

安見邦夫 保育士。

安見弓子 邦夫の妻。スーパーのパート。

 

隈島 蝦蟇倉警察署の刑事。

竹梨 隈島の後輩刑事。

代田 鑑識官。

水元 新米刑事。

絹川 検視官。

 

馬珂(マー・カー) 中華料理店の息子。中国人。

山内 馬珂のクラスメイト。

 

宮下志穂 宗教団体・十王還命会の幹部。

守谷巧 十王還命会の支部長。

 

道尾秀介著「いけない」の背表紙

 

道尾秀介「いけない」のあらすじと感想

「弓投げの崖を見てはいけない」

安見邦夫は交通事故に巻き込まれたが、加害者側が逃走。

 

その事故の捜査中に殺人事件が発生。

殺されたのは、警察が追っていた加害者か?

 

家族を失った安見弓子は、新興宗教の勧誘を受けるがーというあらすじです。

 

これは見事に騙されました。

 

途中で、騙されたわ!と気付きまして…いったん読み終え、読み返しました。

 

誰が死んだのか?を読者に問いかけるラストになっています。

被害者についての答え合わせがしたいです。

 

「その話を聞かせてはいけない」

中国人の小学生・珂(カー)は、殺人事件の現場を目撃した。

口をきく唯一のクラスメイトに打ち明けてしまうが、本当に殺人が起きたのかどうか、確信が持てずに日々を過ごすーというあらすじです。

 

この章は私の頭脳では解釈が難しく、どなたかに教えを請いたいところです。

 

まあそうは言っても身近にそのような人がいるわけもないので、何度も読みました。

現代文の問題を解くように、ひたすら読みました~。

 

自分なりの結論は出せましたが、これも答え合わせがしたいなあ。

 

しかしながら、章末の画像。

あっと驚くものが写っておりまして、これが大きなヒントになりました。

 

道尾秀介「いけない」の目次

 

「絵の謎に気づいてはいけない」

宗教団体の幹部・宮下の遺体が自宅マンションで発見された。

自殺との見立てだったが竹梨と新米刑事の水元は捜査を続ける、というあらすじ。

 

この章はまさにタイトル通り、絵の謎に気づいてはいけないな、という感想。

気付かなければ、違った結末になったのかもしれません。

 

また、第一章・第二章の事件を回想させるような描写もあり、違った角度から見ることが出来ました。連作短編ならではの楽しみ方ですね。

 

どうでもいい話なのですが、宗教って身近な人が亡くなったタイミングで勧誘にくるんですか?ああ、イヤだイヤだ。

 

個人的には、この第三章が一番読みやすくてわかりやすかったかなと思います。

 

「街の平和を信じてはいけない」

最終章は書き下ろしです。

 

これまでの章の謎解きの大ヒント(!)が物語の中に散りばめられています。

しかもそれが、あからさまに語られるのではなく、話の中で何気なく(自然に)登場してくるのです。

 

そういうことだったのか、とスッキリした部分もありますし、読者によって捉え方が違ってもいいのかなと感じた部分もあります。

 

まとめ

各章末にイラストや画像があり、アッと思わせる仕掛けになっています。

本作品を読む前に予備知識として頭にあった「体験型ミステリー」ってどういうこと?と思っていたのですが、こういうことだったんですね。

 

答えを導く楽しみがあり、工夫が凝らされてある本でした。

 

読了した方と、どう思った?と色々意見交換しあいたくなる一冊。

 

最終章のタイトル「街の平和を信じてはいけない」とはまさにそうで、こんな平和じゃない街、こわくて住めません…。