貫井徳郎「不等辺五角形」のあらすじと登場人物
もう9月!
昼間はまだ暑いのですが、朝晩はいよいよ秋めいてきてようやくほっとしているところです。大好きな桃とスイカの時期が終わり、少し寂しいです。
さて今日紹介する本は、貫井徳郎さんの最新作です。
テレビで取り上げられたようで、近所の書店で山積みにされていました。
うちはテレビがないのでその辺りに疎いのですが、テレビの影響は大きいのだなあと感じます。
貫井徳郎著「不等辺五角形」は、2025年6月に東京創元社から発売された小説。全299ページ。初出は「紙魚の手帖」2024年2月~12月。
以下、ざっくりとあらすじを。
マレーシアのインターナショナルスクールに通っていた、男女の証言で成り立つストーリー。
作中に登場する5人は、20年以上の長い付き合い。
メンバー内で殺人が起こり、それぞれの人物が弁護士を相手に一人語りをしていく。
語り手となる登場人物は辰巳重成、増田聡也、原夏澄、里村梨愛。
そして殺されてしまったメンバーは、雛乃。
重成は、仕事で日本を離れることになった。
そこで、聡也の親が所有する葉山の別荘に5人が集まり、送別会を行うことに。
その夜、梨愛は雛乃を殺してしまう―。というあらすじ。
貫井徳郎「不等辺五角形」の感想
証言者の皆が主観で語るのでメンバーの人物像が掴めなかったのですが、だからこそ真実が気になって没入できたような気がします。
そしてまた、事件当夜の記憶も少しずつ違っていました。
予想だにしないことが起きたとき、慌ててしまうのは仕方がないことだと思います。
人の記憶というのは、案外当てにならないものかもしれません。
雛乃を殺してしまった、と自白した梨愛でしたが、なにかひっかかる。
そもそも、動機は?
そして、なぜメンバーらとの面会を拒否しているのか?
梨愛は正義感が強く、人と争わないタイプのようです。
ちなみに彼女は、独身主義を公言していました。
被害者である雛乃の至らなさを指摘する人物はいても、梨愛のことを悪くいう人物がいないという点も気になりました。
かつての学校での出来事や、誕生日会でのエピソードの回想、それらが徐々にメンバーの個性を浮き彫りにしていくようで、面白かったです。
同じ場所にいたはずなのに、感じ方がそれぞれ違っていたのも興味深くて。
日本の学校とは違った、特殊なカリキュラムで教育を受ける、というのはその後の成長に影響が大きいでしょうか。この作中の女性陣でいうと、皆個性が強いというか主張が強い、という印象を受けました。
メンバー内での恋愛もあり、そりゃ揉めるわけだわという状況に妙に納得したり。
すれ違い、はたまた一方的な思いもあったり、と次々と事実が語られていきます。
まさに、タイトル通りの不等辺五角形です。
ミステリーがお好きな方、ぜひ読んでみてください。
心理戦が楽しめます。
まとめ
葉山の別荘で事件が起こったり、登場人物5人が海外のインターナショナルスクール出身だったり、と自分とは掛け離れた世界の出来事でした。
犯人と被害者がすぐに明らかにされてはいるのですが、最後に「えぇーっ!」と覆されます。
この作品、読んだ人と答えあわせがしたいなあ。
私は3~4回読み直しました。
読むたび、物語の輪郭がはっきりしてきます。