伊坂幸太郎「サブマリン」の登場人物
伊坂幸太郎著「サブマリン」は、2016年3月に講談社から発売された小説。
全267ページの書き下ろし作品。
読み始めてすぐ、少年犯罪を扱う作品だなというのが分かったため、全体的にシリアスな感じなのかと思ったのですが、そういうわけでもなくて。
人は亡くなるし事件も起こるのですが、登場人物らの会話が軽妙で愉快なのです。
風変わりな人も出てくるし。
では、主な登場人物の紹介です。
武藤 家裁調査員。主人公。
陣内 家裁調査員。主任。
木更津安奈 家裁調査員。
小山田俊 試験観察中の高校生。15歳。
棚岡佑真 アルバイトの少年。19歳。
棚岡清 佑真の伯父。大学教授。
田村守 佑真の友人。浪人生。
若林 29歳の青年。
永瀬 視覚障碍者の男性。陣内の知人。
優子 永瀬の妻。
伊坂幸太郎「サブマリン」のあらすじ
家裁の調査員である武藤は、主任の陣内、年下の木更津安奈とチームを組んでいる。
陣内は自由過ぎる傾向の、はた迷惑な人物。
木更津安奈は、感情があるのかないのか、捉えどころのない女性。
武藤が担当することになった少年は、無免許で車を運転し、ジョギング中の男性を死なせてしまった、19歳の少年。
当初、彼は事件のことを語ろうとしなかった。
一方、試験観察中の高校生・小山田俊との面談はスムーズに進んでいた。
雑談を交わすなど、一般的なコミュニケーションは取れている。
少年らの犯罪の裏には、何があるのかー。
伊坂幸太郎「サブマリン」の感想
19歳の少年・棚岡佑真は、10年前、小学生のときに交通事故で友人を亡くしています。
その事故を起こしたのは、当時19歳だった少年。
そしてその5年前、佑真は両親を事故で亡くしています。
そんな彼が、なぜ無免許で運転し、事故を起こしてしまったのか。
鑑別所では口をつぐんでいたこの少年でしたが、ふとした武藤の言葉に反応を見せ、意外なところから事故の全容が分かり始めます。
調査官、ここまで入念に調べるのかあ、と思ってしまいました。
もちろん小説の(架空の)話ですし、個人差もあるのでしょうけれど。
武藤の上司である陣内の、存在感よ。
どうしてそうなるの?その発想はどこからくるの?
まさに、奇想天外。
陣内のような強い個性の人が出てくる話は、当の本人が語るよりも身近な人物の視点で描いた方が、より伝わりますね。(と、ある作家の本を読んだときに学びました。)
陣内本人の中で、見聞した事柄がどう変換されているのかは不明ですが、とにかく変わった人です。
やりたい放題に見える陣内だけれど、ただ者ではない。
意味のないことに思えた言動が、実は巧妙に仕組まれていたことだと後に判明。
それにしてもこの職業、想像以上に大変な印象です。
事件を起こした少年の調査をするわけですが、面談やら判断やら、神経使うだろうなあ。
少年が犯罪を犯した場合、更生への道に重きを置いているようですが、近年の痛ましい事件を耳にすると、それでいいのかと思うこともあって、なかなか難しい課題だなと思います。
事情を加味すれば、致し方なかったという事件も存在しますし。
試験観察中の高校生・小山田俊なんかは、決して悪い子ではないと思うのですが、どうかな。
家裁の調査官が3人で1チームであるとか、試験観察中とは?など、知らなかったけど知ったら楽しい、みたいなことが散りばめられていて、ほおほお、と楽しみながら読みました。期待を裏切らない面白さ。だからまた、彼の作品を手に取るのです。
最後に
武藤と陣内が登場する「チルドレン」という作品が、2004年に刊行されているそう。
未読なので、読んでみたいと思います。
(むしろ、そちらから読めば良かったのかもしれません。)