篠田節子「インドクリスタル」の登場人物
篠田節子著「インドクリスタル」は、2014年12月に角川書店から発売された長編小説。
全541ページ。
初出は「小説 野性時代」2012年1月号~2014年4月号。
分厚い本だし、読み終えるまでに時間がかかりそう、と気合を入れて読み始めました。
しかし、読み出したらあっという間に読み終えてしまいました。とっても面白かったのでご紹介。
では、主な登場人物の紹介から。
藤岡 「山峡ドルジェ」の社長。主人公。
徳永 「狭間通信科学」の社員。藤岡の元同僚。
藤岡勝弘 「山峡ドルジェ」の会長。
寺島 「山峡ドルジェ」の製造部長。
藤岡頼子 藤岡の妻。
藤岡若葉 藤岡の娘。大学3年生。
司 飲み屋・カレー屋のマスター。
ロサ インドの少女。
サミル・ナヤル 水晶屋の店主。
アシシュ・チョードリー 採掘会社の社長。
カメシュワール 地主の老人。
ジョン・ドナヒュー NGO「サンガ・リサーチ」のスタッフ。
クリシュナ・アイヤー NGO「サンガ・リサーチ」のスタッフ。
マンガル コドゥリ村の村長。
バゲル 芸術家・州議会議員。
ロケス コドゥリ村の住民。
篠田節子「インドクリスタル」のあらすじ
山梨県にある「山峡ドルジェ」は、精密機器の原料となる高品質の人口水晶を製造する企業で、その製造にはマザークリスタルとなる水晶が必要。
インドのクントゥーニというところでとれる水晶が条件にあうことがわかり、獲得に乗り出す。
取引先の会社に勤務する徳永(藤岡の元同僚)がインドに駐在しているため、彼の助けを借りながら取引をはじめようとするのだがー。
篠田節子「インドクリスタル」の感想
全編、主人公の藤岡の視点から描かれています。
零細ながらも人口水晶の製造では先を行く会社、「山峡ドルジェ」婿養子に入った藤岡。
社長とはいえ、実権は会長である義父が握っているという微妙な立場にあります。
一方で底知れぬ野心も持ち合わせていて、というのが面白かったです。
この物語のもう一人の主人公、といってもいいくらいの存在感を放つのが、ロサという少女です。ホテルの使用人であり、性接待の相手もさせられているという立場。藤岡は、救い出そうと手を差しのべます。
彼女の持つ、信じがたく並外れた能力には、ただただ驚くばかりです。記憶力もいいし、研ぎ澄まされた勘を持ち合わせているのです。
藤岡と出会ったことで、酷な生活を強いられていたロサの人生が変わり始めます。
少女だったロサが成長していく過程も描かれています。
(時が少しずつ流れていくお話なので、大学生だった藤岡の娘も就職しますし、徳永の拠点も変わります。)
インドという国が抱える貧困等の問題や課題が盛り込まれていて、苦しくなる場面も多々ありました。暴力が、ひどすぎて。
日本とはあまりにも文化や意識が違うので、実際に取引をする企業は、さぞ大変な思いをしているのでしょう。
現地で危険な生活を強いられている人々が多くいる、という事実も突き付けられました。
誘拐事件が起こり、はらはら。
主人公が命の危機にさらされるような場面に遭遇しては、ドキドキ。しかし、頁をめくらずにはいられません。
契約・交渉の場面では、ビジネスマンの損得勘定が見え隠れ。腹の探り合いがはじまります。
作中のSR(サンガ・リサーチ)という組織は、先住民の福祉と環境保護に尽力する団体。こうした団体の活動も描かれていて、取材が大変だっただろうなと感じました。
文化の違う民族と関わる仕事をする主人公、そして不思議な少女ロサの成長にも注目です。
まとめ
外国人(主にインド人)が多く登場するので、名前がなかなか頭に入ってこなかったのですが、ちゃんと物語のはじめに人物紹介が記されています。(親切!)
遅ればせながら、篠田さんの作品にドはまり中。
先日、某局の男性アナウンサーさんも、彼女の本は面白いんですよ!とラジオ番組内でおっしゃっているのを耳にし、嬉しくなりました。
さて、次はどの作品を読もうか。