篠田節子「美神解体」の登場人物
篠田節子著「美神解体」は、1995年8月に角川ホラー文庫から発売された小説。
全227ページ。
巻末の解説は三橋暁氏。
※1994年2月号「小説王」に掲載されたものに加筆修正とのこと。
この本、美容室の待ち時間に読もうと思って選んだ本です。
文庫本は、持ち運びに便利なので。
飛び込みで入ったのでちょっと待ちましたが、おかげで施術を終えて帰る頃にはあらかた読み終えていました。(続きが気になり、買い物を中止して急いで帰る始末。)
主な登場人物は、主人公の麗子と平田一向の二人。
麗子はピアニストで、平田はデザイナーです。
篠田節子「美神解体」のあらすじ
ホテルのパーティーで、シャンソン歌手のピアノ伴奏の代役を務めることになった麗子。
しかし、歌い手の女性が望む伴奏が出来なかった。
歌い手から心無い言葉を投げつけらる彼女の前に、ひとりの男性が現れる。麗子は残りの演奏を放り出して彼を追ってしまう。
彼に近づこうとするも、いつも突き放されてしまう。
何故だろうといぶかる麗子は、彼が休暇中に訪れるという八ヶ岳の山荘へと向かうー。
彼女は美容整形手術を繰り返し、人工的な美しさの顔を持つ女性だった。
篠田節子「美神解体」の感想
平田は、医学部を中退してデザイナーになったという、ちょっと変わった経歴の持ち主です。
そんな彼からは、危険な香りがします。近づいてはいけない、という種の。
それを察知していたにもかかわらず、彼に吸い寄せられるかのように追ってしまう麗子。
美容整形の手術をした彼女ですが、人間らしさが感じられないほどまでの美しい顔を望んだのです。それは、幸福とはいえない過去がそうさせたのでしょうか。
例えば、幼少期における、父親からの言葉もひどいものでした。
高校二年の冬に経験したという恋の話には、啞然としました。
当時20代の教員に恋をした麗子。しかし相手にされなかったことに納得がいかない、という理由からの、驚くべき行動ー。
この場合、教員がお気の毒としか言えません。
一方的に好意を寄せられた、その相手が悪かった…。
この一件のインパクトが強く、最後まで麗子に対する不信感がつきまといます。
彼女の美容整形手術を後押ししたのは、結婚を申し込まれたときに相手から言われたある言葉だった、とは言いますが。
孤独だった主人公が惹かれ、追いすがってしまったのが平田。
しかし彼は、麗子と距離を保とうとするのです。
ついに、彼が休暇を過ごす山荘にまで行ってしまいー。
そこで、衝撃の光景を見てしまうのでした。
これは知らなくてもいい事実、というか知りたくなかった事実でしょう。
平田は異常な性癖を持っているのですが、麗子もなかなかです。
なんというか。一人の男性をここまで追いかけてしまう主人公も、異様ではないかと感じました。
ここまでの衝撃は予想していなかったかもしれませんが、人には踏み込んでほしくない領域があると思うんです。あからさまに退かれたら、身を引くというのもとても大事。
この物語のような騒動に、巻き込まれないためにも…。
まとめ
登場人物のどちらもが変わっていて、始終ぞくぞくしっぱなしでした。
ずっと落ち着かないし、全然気持ちが理解できない。
これぞ、ホラーなのかもしれません。
麗子も平田も、身近にいたらこわいなあ。
スーパーでの買い物を中止し、急いで帰宅→すぐに残りの部分を読んで、スッキリ。
おもしろ&こわ~い一冊でした◎