宮部みゆき「刑事の子」の登場人物※「東京下町殺人暮色」改題
宮部みゆき著「刑事の子」は1994年10月に光文社文庫から発売された長編のミステリー小説。
※「東京下町殺人暮色」改題。
1990年4月、「東京殺人暮色」としてカッパ・ノベルスより刊行された作品。
30年以上、前に発表されたミステリー小説です。
全303ページ。
絶版になったのか?と思いきや、タイトルが2度変わり、現在は「刑事の子」として発売されているようです。
いい本なのでぜひ記事にして紹介したい、と思い再読しました。
まずは、主な登場人物の紹介です。
八木沢順 主人公の中学一年生。
八木沢道雄 警視庁捜査一課の刑事。順の父親。
幸田ハナ 八木沢家の家政婦。
後藤慎吾 順の同級生。
速水俊 所轄の刑事。
篠田東吾 日本画家。72歳。
篠田明子 東吾の娘。
才賀英雄 東吾の秘書。公認会計士。
才賀英次 英雄の息子。20歳の大学生。
宮部みゆき「刑事の子」のあらすじ
両親が離婚し、刑事の父親・道雄と二人で暮らすことになった八木沢順。
そこへ、ベテラン家政婦のハナが通いでやってくることになった。
住まいは下町。
その町内で、「篠田邸で人殺しがあった」との噂が流れているという。
道雄の元へは、バラバラ死体の一部が発見された、との一報が入るー。
宮部みゆき「刑事の子」の感想
遺体の一部が発見される、というプロローグからはじまりますが、もう一人、被害者が出てしまいます。
その後、八木沢家と警察に手紙や犯行声明が届き、混乱が続きます。
刑事である道雄らが被害者の割り出し等の捜査を進める中、息子の順も、慎吾やハナを巻き込み、捜査を始めます。
篠田東吾に接触を図る、順。
そして東吾の口から語られる、「火炎」という作品に隠された秘密ー。
72歳の登場人物(東吾)が東京大空襲を経験している、というのを読むと、30年以上前の作品であるという事を思わせます。
当時は、戦時中の体験を語る大人が身近にいた頃でもあったんですね。
戦争を体験した方々がこの世を去っていくのは、自然な流れなのですが、忘れてはならない過去として刻んでおこうと思いました。
彼が語った壮絶な戦争体験や、いかにして生き延びて「今」があるか、という話が、意外な形で事件にかかわって来るのです。まさかの展開が待っていました。
少年犯罪の問題点に関しても考えさせられ、ミステリー小説でありながらも色々な「気づき」をさせてくれる一冊でした。
順の友達である慎吾の、無垢な子供らしさが可愛かったです。
中学生二人の好奇心なんて、抑えられるはずもありません。
家政婦・ハナのきちんとした感じも良かったです。
レトロな言葉づかいも素敵だし、順との相性も◎
いい味、だしてます。
まとめ
登場人物それぞれのキャラクターが皆、人情味あふれていて好ましいんです。
順とは離れて暮らす母親(離婚後、再婚)とのシーンも、良かったなあ。
このあたりも、さすがは宮部さん!という感じ。
映画の引用が度々でてくるので、著者の宮部さんは、たくさんの映画を観ていらっしゃるのでしょう。ちなみに映画をほとんど観ない私は、どれも知りませんでした…。
事件の犯人が明らされ、真相がわかったところで、過去との繋がりが見えて来ます。
ああ、そうかあ、と。
なぜバラバラにする必要があったのか?の謎に関しては、込み入った事情がありました。
(よく思いついなあと感嘆。)