宮部みゆき 時代小説ミステリー「ぼんくら」の登場人物
宮部みゆき著「ぼんくら」は、講談社から発売されている長編の時代小説(ミステリー)。
初出は小説現代。
1996年3月号~2000年1月号に掲載され、加筆訂正し発売。(最終章は書き下ろしです。)
単行本の発売は2000年4月。全516ページ。
文庫版の発売は2004年4月。上巻336ページ、下巻311ページ。
紹介する「ぼんくら」は一度読んだきりの作品でしたが、再読してみましたら、内容をすっかり忘れておりました!
もう一度楽しめたので、得したような?複雑な気分ではありますが、まあ良しとしましょう。
あらすじと感想の前に、主な登場人物の紹介をします。
井筒平四郎 同心(町方役人)。46歳。
お徳 煮売屋。世話好きで面倒見が良い。
小平次 平四郎付きの中間(ちゅうげん)。
佐吉 鉄瓶長屋の差配人。官九郎という烏を飼っている。
辻井英之介 平四郎の幼なじみの同心。「黒豆」の呼び名で登場。
弓之助 平四郎の妻方の甥。
政五郎 岡っ引き。
三太郎 記憶力抜群の少年。通称「おでこ」。
港屋総右衛門 鉄瓶長屋の地主。
おふじ 総右衛門の妻。
久兵衛 鉄瓶長屋の元差配人。
仁平 岡っ引き。悪い噂が絶えない。
宮部みゆき「ぼんくら」のあらすじと感想◎再読
7つの章で構成されているため、連作の短編集?かと思いきや、長編でした。壮大なミステリー作品です。
舞台は深川北町の一角にある、通称・鉄瓶長屋。
それぞれの章を、簡単に振り返ります。
殺し屋
寝たきりの父親、その息子・太助、娘・お露で八百屋を営む一家。
太助が殺され、お露は「殺し屋が兄を殺した」というがお露の浴衣には血がついていたー。
これも下町の人情なのかな?という終わり方なのですが、昔はこういうことがあったのかもしれない、と思うと複雑な気持ちになりました。(今もあるのかな。)
博打うち
桶職人の権吉が博打にハマっているという。困り果てて、娘を売り飛ばそうとするがー。
博打うちは、治らぬ病なのでしょう…。
通い番頭
鉄瓶長屋へ、男の子が迷い込んできた。
口をきかないので、とりあえず差配人である佐吉が面倒をみることになったがーというあらすじ。
「奉公人」という立場がここまで弱いものだとは知りませんでした。なんと、まあ…。
ひさぐ女
鉄瓶長屋へ移ってこようとする、おくめ。
彼女は、春を売って生計を立てている女だったーという話。
恥ずかしながら「ひさぐ」の意味を知らずに読み始めたのですが、なるほどそういう意味だったのですね。
拝む男
壺を拝むことに夢中になっている一家がいる。
自分たちだけでなく、長屋全体に信心を広めようとしているのだとかー。
信心は面倒だからしない、という平四郎ですが、江戸時代は現代よりも神や仏に祈ったりする人が多かったんだろうなという気がします。
信じる信じないは自由なのですが、勧誘だけは勘弁してほしいです。
長い影
「長い影」より前の章は、本章のために描かれたのだと、読み終えながら気付きました。
行方知れずだった人物が突如現れたり、終わったかと思われた話をもう一度検証したり…全て、つながっていたのです。
「ひさぐ女」で登場したおくめは、すっかり鉄瓶長屋に馴染んでいましたし。
この章から登場する美少年・弓之助が、賢く、とにかく可愛い。
「おでこ」も、なかなかの見せ場があります。
宮部さんの作品でしばしば描かれる魅力的な少年は、時代小説でも登場します。
鉄瓶長屋から次々と店子がいなくなる不可解な流れの謎も、ミステリー作品らしく徐々に解き明かされていきます。下町の人情が感じられる一幕も。
烏の官九郎の活躍も、忘れてはいけません。
仁平の行った根回しやら悪巧み…とにかく嫌な奴でしたが、総右衛門の女好きにも呆れます。
責任は果たしている(?)のかもしれませんが、好きにはなれません。
幽霊
書き下ろし作品の最終章。
正体は明かされない謎の女が出てきます。
もしかしてあの人?と予想しているのですが、さてどうでしょう。
まとめ
「ぼんくら」はシリーズ第一作で、「日暮らし」、「おまえさん」と続きます。
ぼんくらの内容すら覚えていなかったので、続編もおそらく忘れているでしょうから、再読してみましょう。
あまり耳にしない「町年寄」や「差配人」についても丁寧に解説してあります。
江戸時代の制度や階級について深く知ることが出来ます。
時代小説ってなんか難しそう…と遠ざけていたのですが、宮部さんの作品は読みやすいうえに面白い!
ぼんくら 下 講談社文庫 / 宮部みゆき ミヤベミユキ 【文庫】