まつりパンライフ

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篠田節子「ブラックボックス」のあらすじと感想

篠田節子「ブラックボックス」単行本表紙

篠田節子「ブラックボックス」の登場人物

久々の更新になってしまいました。

あまりにも暑くて、生きているのがやっと。

朝の4時過ぎに散歩に出ても汗をかくほどの、湿気と温度。

買い出しは命がけです。

 

束の間、韓ドラにハマっていた私ですが、やっぱり読書!ということで篠田節子さんの昔の作品を読み出したところ、まぁー面白い。というわけで、紹介させてください。

 

篠田節子著「ブラックボックス」は、2013年1月に朝日新聞出版から発売された小説。

初出は「週刊朝日」。

全498ページ。

 

以下、主な登場人物の紹介です。

三浦剛 農業従事者。

加藤栄美 サラダ工場のパート勤務。

堀田和代 サラダ工場のパート勤務。チーフ。

片岡 サラダ工場の製造部長。

今森信昭 後藤アグリカルチャーの社長。

横関 コーヒーショップの品質管理部長。

市川聖子 剛と栄美の同級生。栄養教諭。

クリスティーナ フィリピンからの研修生。

マリア フィリピンからの研修生。

ジャスミン フィリピンからの研修生。

 

篠田節子「ブラックボックス」のあらすじ

都内の投資顧問会社で働いていた栄美だったが、トラブルに巻き込まれ辞職。

地元に戻り、サラダ工場のパートとして外国人労働者と共に働くことになった。

工場では、労働環境や安全面での問題に直面。

 

一方、剛たちの農家は農業生産法人「ブライトX」を立ち上げて、安定供給を可能にした。これは、肥料農薬メーカー「後藤アグリカルチャー」のシステムと製品によるものである。

安定した収益を上げられてはいるが、剛がやりたかった仕事や夢とはかけ離れていた。

その後、後藤アグリカルチャーからのハイテク農場運営の打診を受け、渋々受け入れることにしたのだがー。

 

篠田節子「ブラックボックス」の感想

色々と、衝撃的でした。

まず、栄美が働くサラダ工場の過酷な労働形態。

食品、しかもサラダは加熱せずにそのまま食べるわけですから、温度や衛生管理が徹底されています。

 

冷え切った工場内で、立ちっぱなしの作業。

トイレも自由に行けないというのは、きつい。

工場の深夜帯の仕事は、主に外国人の労働者によるものでした。

(研修生として海外からやってくる彼女たちへの待遇は、改善すべきだと思いました。)

 

工場の作業工程にも、問題が。

自社の製品を「毒の塊」と言い捨てるチーフ、堀田。

彼女は添加物や作業工程で使われる薬剤に、異様なほど神経質。

「それを気にし出したら」なんて思っていたのですが、次第にそうは言っていられない事態に発展していくのです。

 

市販のサラダを食べる機会がない私でも、言葉を失います。

 

篠田節子「ブラックボックス」扉頁
篠田節子著「ブラックボックス」背表紙画像

 

さて。ハイテク農場のシステムでは、土を使わずに作物を作ります。

衛生を重視し、全て人工。

農薬も使わなくていいとなれば良いことづくめ、かと思いきや、そう単純でもなく。

 

ハイテク農場で生産された作物は、給食にも供されます。

安心・安全を掲げる場所で作られているはずの給食が、実はそうでないとしたら?

 

話が大きく動き出すのは、中盤、栄美が旧友の聖子に再会するところから。

聖子は栄養教諭で、子供たちの安全を願う人物。

この地域で起こる小児癌やアレルギーの多発、従業員の死や奇形児出産。

 

志が高い友人というのは、かけがえのない存在ですね。

内部告発(声をあげる)、というのは勇気のいること。

行動を起こした人物たちのおかげで、不安にならずに暮らせる人が増えたのは確かだと思います。

 

まとめ

GM作物(遺伝子組み換え)って、私は怖いです。

「こういうリスクがある」、と知りながら食べるのと「知らないうちに食べてしまっていた」、というのは違うと思うのですが、隠蔽されたりしてしまえば分からない。

 

毎度のことながら、篠田さんの作品は読後感が爽やか。

各方面に、ものすごく取材されたのだろうと思います。

小説としても面白かったけれど、ドキュメント作品のような一面も感じられました。