まつりパンライフ

家で焼いたパンと読んだ本の備忘録、愛用のキッチングッズの紹介をしています

山本文緒「自転しながら公転する」のあらすじと感想

山本文緒「自転しながら公転する」の表紙

山本文緒「自転しながら公転する」の登場人物

山本文緒著「自転しながら公転する」は2020年9月に新潮社から発売された長編小説。

 

初出は「小説新潮」。プロローグとエピローグは書き下ろし。

単行本化にあたり改稿、との記載あり。

 

全478ページ。

 

以前聴いていたラジオ番組(残念ながら終わってしまった)に、山本文緒さんがゲストでご出演。

当時は本作の発売前だったのですが、紹介していた内容に惹かれました。

発売されたら読もう、と思っていたものの、気付けば三か月経過…。

 

しかし先日「あさイチ」に山本文緒さんが出ているのを観て、これはいよいよ読まねばと思い、さっそく読んだ次第です。

都がどんな選択をするのか?恋愛の行方は?を気にしながら、少しずつ読みました。

 

あらすじと感想の前に、主な登場人物をまとめます。

 

与野都 主人公。32歳。アウトレットモール勤務。

羽島貫一 寿司職人。ヤンキー…?

ニャン君 ベトナム人の若者。

 

与野桃枝 都の母。更年期障害に悩む。

樫山時子 桃枝の友達。

 

そよか 都の友達。文具メーカーの営業職。独身。

絵里 都の友達。既婚。

 

山本文緒「自転しながら公転する」のあらすじ

北関東のアウトレットモール(衣料品店)で働く、主人公の都。

重い更年期障害の母親の面倒をみるため、都内のアパレルメーカーを辞めて実家に戻ってきた。

 

都は同じモール内で働く貫一と付き合いだすが、周囲の反応は様々。

交際する相手としては良いが、将来については決めかねていた。

 

家族(母親)の介護、仕事。悩みは尽きないー。

 

山本文緒「自転しながら公転する」の感想

都と貫一はどうなるの?という点も気になるのですが、30代ともなると恋愛だけしていればいいというわけにもいきません。

 

仕事や将来、家族との接し方についても描かれた小説でした。

境遇が異なる地元の友達とも関係性も、面白かったです。

 

主人公の都がアパレル業界で働くという設定なので、ファッションの描写が具体的でした。アイテムのあわせ方や着こなし術は、雑誌の特集を連想しました。

店頭に立つ売り子は、裏方の仕事もあるんですね。

意見を求められたり、人間関係を円滑にしたりもしなければならず。

 

都のどっちつかずの性格もあるのでしょうけど、契約社員という半端な立場も事態をややこしくしているような気がします。

セクハラやパワハラの場面もあり、ざわざわっとなりました。

 

山本文緒著「自転しながら公転する」の背表紙

 

都の母・桃枝の視点で描かれている箇所があります。

 

30代の娘を持つ母というのは、こんな気持ちなのかなあと。

娘の容姿に関しても、客観的に見ている桃枝。

同性ということもあるのかもしれませんが、嘘ってバレるんですね…。

 

更年期障害についても事細かに記されていて、ある程度心構えができました。

ホルモンの乱れと言ってしまえばそれまでなのでしょうが、作中に描かれていたような深刻な事態になったという話は、身近で耳にしたことがなかったので衝撃を受けました。個人差はあるのでしょうが。

 

貫一という恋人がいつつ、都に言い寄って来るお金持ちの男性が登場したりと、恋愛の要素が強い一方、人や仕事との距離について思うところもありました。

女性の視点で描かれたストーリーなので、男性側はどう思うのだろう?と気になりました。

 

最後に

警察小説の後に読んだせいか、会話の部分が多いなという印象を受けました。

小説は文字ばかりで読みにくい、と感じている方でもすんなり読めると思います。

「画」が頭の中に浮かんでくるような小説でした。

 

プロローグ&エピローグは書き下ろしだそうですが、この部分の存在は大きいです。

あるのとないのとでは、印象が随分と変わるように感じました。「小説新潮」の連載で読んでいた方も、単行本で再び楽しめる仕様になっているのかもしれません。

 

昔、知人に薦められて読んだ「恋愛中毒」で山本さんを知りました。

今はほとんど読まなくなってしまった恋愛小説ですが、当時はよく読んでいたのを懐かしく思い出しました。「プラナリア」なんかも良かったなあ。