桐野夏生「日没」の登場人物
桐野夏生著「日没」は、2020年9月に岩波書店から発売された小説。
「文学」、「世界」の原稿に加筆・修正を加えたとのこと。
掲載時期は2016年~2020年。
全329ページ。
去年発売された、桐野さんの作品の紹介です。
表紙におののき、なかなか読めずにいたのですがようやく読み終えました。
なるほど、なかなかズシッとくる内容…。
では、主な登場人物の紹介です。
マッツ夢井 作家。本名、松重カンナ。
松重信弥 マッツの弟。
金ヶ崎有 マッツの元彼。
多田小次郎 七福神浜療養所の所長。
西森功 文化文芸倫理向上委員会の男。
東森遼 西森の後輩。
蟹江 療養所のスタッフ。秋海のおば。
蟹江秋海 療養所のスタッフ。
相馬 精神科医。
三上 看護師。
桐野夏生「日没」のあらすじ
作家として執筆活動を行う主人公の元へ、「召喚状」が届いた。
差出人は「総務省文化局・文化文芸倫理向上委員会」で、内容は出頭の要請だった。
書面には、講習を予定している旨が記されていた。
指定された駅で待ち合わせ、療養所へ連れていかれるが、そこで待ち受けていたのは怖ろしい治療だったーというあらすじ。
桐野夏生「日没」の感想
不快なのに、ページをめくってしまう。
嫌な気分になるのに、読み進めてしまう。
もしかしたら途中で、読むのをやめてしまうかもと思ったほど恐怖を感じた本でした。
第1章は「召喚」。マッツ夢井の飼い猫・コンブが帰ってこないことを気に掛ける様子やパソコンの調子がよくないこと、などが描かれるところから始まります。
さてこの先、どんな風に展開していくのかな?などと気楽に読み進めていったのですがー。
マッツの自宅に届いた、「文化文芸倫理向上委員会」略してブンリンからの奇妙な内容の封筒。
それに従う形で、七福神浜療養所での生活を送ることになった主人公。
この療養所は門番がいるうえ、コンクリートの塀に有刺鉄線という、収容所のようなところなのです。制服を着せられ、携帯電話の使用は不可。
そして所長の多田から、作家として社会に適応した作品を書くように更生せよと告げられます。
この辺りから、「え?どういうこと?」と理解に苦しむ私。
作家が、好きなように話を書くのを禁じようとしている、ということ?過激な内容の話は倫理的にダメ、ということ?
療養所内での彼女の呼び名は、名前でなく「B98号」。
歯向かえば減点され、療養期間が延長され、罰則が科されるという仕組み。
入居者らの交流も禁じられているため、唯一の楽しみは散歩と食事です。
しかしその飯が、とにかくまずそう。
ここまで食欲を減退させるほどの表現があろうかと思うほど、まずそう。
生臭さの残る魚の煮つけだとか、茹ですぎてくたくたのブロッコリーだとか、食材の欠片がかろうじて確認できる味噌汁だとか。その他もろもろ。
第2章の「生活」では精神科医の相馬女史が登場し、続く第3章ではさらに酷い仕打ちが待ち受けていました。執拗な嫌がらせにもあい、尊厳を奪われます。
次はどんな目にあうのだろうー。
主人公は抵抗を試みます。
ラストの章は「転向」。
突破口はあるのか。脱出できたのか。
まとめ
このラスト、どうかなあ…というのが本音です。
どちらかというと夢を見る方なのですが、2日続けて悪夢を見ました。
まず、結婚詐欺に引っかかる夢。(作品とは関係ありませんが、目覚めが非常に良くなかった。)
そして次の日は、強制的に注射を打たれて意識が朦朧となる夢。
こちらは「日没」の内容とリンクしており、うなされました。
こんな世の中になったら、嫌だな。
こわい。