伊坂幸太郎「逆ソクラテス」について
伊坂幸太郎著「逆ソクラテス」は、2020年4月に集英社から発売された本。
書き下ろしの3作品を含む、全5話が収録されています。
全276ページ。
この間、たまむすびを聴いていましたら、山里さんが「道徳の教科書を買って読んでいる」とオープニングで話されていました。
教科書の出どころには笑ってしまったのですが、小学校の教科書から学ぼうという山里さんの姿勢が素晴らしい。(奥様のおかげ?)
ちなみに、1年生の教科書だそうです。
赤江さんの相槌も、いつもながらに面白かったなあ。
今日紹介する本は、そんな、道徳を学ぶかのような一冊でした。
では、それぞれのあらすじ・感想をまとめます。
伊坂幸太郎「逆ソクラテス」のあらすじと感想
逆ソクラテス
主人公の小5~小6時の担任の先生が、「決めつけ」の度が過ぎる人物だったことから、転校生・安斎は作戦を立てる。
クラスの優等生の女子も、その作戦に加わることになりーというあらすじ。
小6にして先生を冷静に分析する、安斎君。
もうソクラテスについて知っているのか。
妙に大人びていて、距離の取り方がうまい彼のふるまいの謎は、後に明らかに。痛快な結末。
小学校の先生の発言って、影響力ありましたよね。
当時はいくらか素直だったため、渋々受け入れていたように記憶していますが、思い返せば「それは違うよね」って事も。
スロウではない
足が遅かった主人公が、5年生の時、くじ引きでリレーに出ることになった。
大人になり、当時担任だった先生とその頃の話をする、という章。
小学校の先生って、教え子のことをどれくらい覚えているのだろう?
リレーは、予想外の結果。
でもそれとは別で、これ、ラスト泣いちゃうよね。
この章の転校生、詳しくは言えないけど…本人の気持ち次第で、やり直せることもあるんだなあ。
非オプティマス
小5の将太のクラスには、わざと缶ペンケースを落とし、授業を妨害するクラスメイトがいた。常に、見下すような発言ばかりする。
担任は新任の男の先生で、頼りないー。
この話を最後まで読んでみて思ったのは、こういうことって、本当にあるから!ということ。世間は意外と狭い。馬鹿にするのは良くない。
いつも同じ服を着ている転校生・福生という少年が登場するのですが、この子の発言がいちいち可愛くておかしい。しっかりした考えは、ありながら。


アンスポーツマンライク
臨場感あふれる、ミニバスの試合の描写から始まる物語。
ルールがわからない私でも、引き込まれました。
チームメンバー5人が久しぶりに再会したとき、公園である現場に遭遇し、皆で窮地を脱します。その後も、メンバーが集まる機会に恵まれてーという流れなのですが。
このメンバー皆が、やさしい。やさしすぎます。
仲間や恩師の存在って、大きいですね。
コーチがいるスポーツの経験がないので分からないのですが、人によって指導の方針が随分と異なるようです。
中には、感情的に怒鳴るコーチも。素人ながらに、良くないなあと感じました。
子供だって大人だって、相手が委縮してしまうようでは伝わらないと思います。
逆ワシントン
同級生の母親の再婚相手に、不穏さを感じ取った謙介。
友達と共に、彼の家を調べようと乗り出すーという章。
なんて楽しそうな!と、ワクワクしてしまう調査方法を思いついた謙介。
私が小学生の頃は、そんなアイテムはありませんでした。
とはいえ、うまく事が運ぶはずもなく。
この章で存在感があったのは、なんといっても謙介の母さんです◎
娘のクラスでの演説シーンが、特に良かった。
大胆な行動を取らずとも、皆の中に彼女のような心がけがあれば、いいのになと思いました。特別じゃなくても、地味でも、いいんです。
なんだか、あたたかい気持ちになりました。ありがとう。
まとめ
全編、主人公は小学生です。
著者があとがきで、小学生が使う言葉なので限られた表現しか使えないというような事を書かれていましたが、その中でここまで深い物語が描けるものかと感動しました。
どんな人にもある、小学生の頃のあれこれ。
私はといえば、「答えがない」というのが苦手な子供でした。
白黒はっきりつけたい性格、というか。
でもその後、答えがないことに直面する機会の多いことといったら。
正解が出なくとも、考えるって大事ですよね。