伊坂幸太郎「重力ピエロ」の登場人物
伊坂幸太郎著「重力ピエロ」は、2003年4月に新潮社から発売された小説。
全337ページ。
再読です。
随分昔に読んだ本ですが、もう一度じっくり読んでみようと思いました。
今の住まいには大きな本棚がないにもかかわらず、買った小説がどうしても処分できない…というわけで、本は実家に置いてあるのです。
たまには昔の本を読み返してみようということで、実家の本棚からいくつか送ってもらった中の一冊です。
この本の凄さが今になってわかりました。そう考えると、年齢を重ねるのも悪くないのかもしれません。
前に読んだときは「まあまあ面白かった」(←大変失礼いたしました。)という印象だったのですが、「とても面白いので、何度も読み返したい一冊」になりました。それくらい、良かったのです◎
では、主な登場人物の紹介です。
泉水 遺伝子情報を扱う会社に勤務。
春 泉水の弟。
泉水と春の父 市役所に勤務していたが、現在は入院中。
泉水と春の父 元モデル。没。
黒澤 探偵。
郷田順子 とある団体の職員を名乗る女性。
葛城 売春の斡旋を行う男。
伊坂幸太郎「重力ピエロ」のあらすじ
泉水と春、2つ違いの兄弟は、母親は同じだが父親が違う。
春の出自には事情があり、「性的なるもの」を嫌悪している。
仙台市内では、連続放火事件が起きていた。
現場の近くには、謎の文字(グラフィティアート)が残されている。
泉水たちが事件を探ろうとする中、遺伝子との規則性を見つけるー。
伊坂幸太郎「重力ピエロ」の感想
再読、とはじめに記しましたが、昔読んだときには連続放火事件と遺伝子の話が、どう関係してくるのか?
と、結果ばかりに気を取られて読んでいたのを記憶しています。
しかし今回時間をかけてじっくり読んでみたら、これは家族の話ですね。
今だからこそ、の気付きがある本でした。
そして、クスッとしてしまう笑いが満載。
こういう伊坂さんのユーモアセンス、大好きです。
泉水の視点からみた「回想シーン」がよく出てくるのですが、そこでの家族の思い出が今の彼らを作り出しているんだろうなというくらい、美しい。
母親も父親も、思いやりを持って泉水たち兄弟を育てたというのが伝わってきます。
離れて暮らす20代の兄弟が幼い頃の話をするって、なかなか想像できないのですが、関係性が築けているからこそなのでしょうね。
父親が入院していますので、それぞれ見舞いに行くわけなのですが、病室での親子の会話が、優しさにあふれていてぐっと来てしまいました。
父親の優しい視点に、泣けてくる。
ところで、黒澤という探偵が出てくるのですが、これって「ラッシュライフ」とかの作品に出てくる人ですよね。
今回も活躍していました。黒澤のキャラクター、好きだなあ。
他にも「マリアビートル」に出てきた中学生なんかを連想させる箇所もあったり、他作品とのリンクも楽しめます。弟の春もそうです。
読み終えてみると、私も知らず知らずのうちに幼い頃の思い出と共に生きているんだなあ、と感慨深い気持ちになりました。
まとめ
再び実家で保管してもらおうかと思っていましたが、しばらく手元に置いておこうかな。
ただ、単行本なので場所をとるんですよね。
保管用に、文庫本を購入するというのもありかも。文庫本化にあたり、改稿したそうですし。
10年以上前の私は、こんなに素晴らしい本から、なにも読み取れていなかったんだわと思うと情けない気もします。が、過去に途中で読むのをやめてしまった本など、今なら楽しんで読めるかもしれないと思うと、ちょっとわくわくします。