まつりパンライフ

家で焼いたパンと読んだ本の備忘録、愛用のキッチングッズの紹介をしています

伊坂幸太郎「ガソリン生活」のあらすじと感想

伊坂幸太郎「ガソリン生活」の表紙

伊坂幸太郎「ガソリン生活」の登場人物

伊坂幸太郎著「ガソリン生活」は、2013年3月に朝日新聞出版から発売された小説。

全413ページ。

 

語り手が車、というユニークな設定の物語。

ミステリーです。

再読になりますが、何度読んでも心があったかくなる、大好きな作品です。

 

では、主な登場人物の紹介から。

 

望月良夫 望月家の長男。20歳の大学生。

望月亨 望月家の次男。10歳。

望月まどか 望月家の長女。17歳。

望月郁子 良夫たちの母親。

 

荒木翠 女優。

江口 まどかの恋人。

細見尚平 望月家の隣人。

玉田憲吾 記者。

 

伊坂幸太郎「ガソリン生活」のあらすじ

望月家の長男・良夫が運転する車に、「逃げているから助けてほしい」と女性が飛び乗って来た。

10年前に一般人と結婚して女優を引退した、荒木翠である。

 

そのすぐ後、荒木翠が交通事故により死亡したとの報道がされた。

不倫相手の運転する車に乗っていたというのだがー。

 

次男の亨は学校で苛められているというし、まどかの恋人は何らかの事件に巻き込まれているらしい。

語りは、望月家の車・緑のデミオ

 

伊坂幸太郎「ガソリン生活」の感想

車どうしの交流(会話)が、読んでいてとにかく楽しいのです。

メルヘンなようでいて、そうでもない。

 

車は、他の車両と会話を楽しむことは出来ても、実際に加速したり減速したり、助言したりすることは出来ないのだから、揉め事は起こりにくい世界です。平和でなにより。

ちなみに、自転車やオートバイとは話が出来ないようです。

 

鉄道に対して憧れを抱いている、というのも愉快。

車は移動するので、情報収集にも長けています。

持ち主の自慢をしたりするのも、可笑しい。

「ほらふき合戦」が始まっちゃうシーン、笑っちゃいます。

 

さて、作中に登場する女優(荒木翠)は名家の生まれです。

不倫疑惑があり、相手も特定済みです。荒木翠は、なぜ彼と不倫を?

 

荒木翠の事故は、とある国の王室の事故を連想させるな、と思っていたら、やっぱりそういう流れになるのですが、思いもよらぬ方向へと進んで行くのです。もうほんと、見事としか言えません◎

 

伊坂幸太郎著「ガソリン生活」の背表紙

 

にしても、10歳の亨が可愛すぎる。

精神年齢は、望月家で一番上だと思われます。

鋭い指摘をし、周囲はたじろぎますが、読者は痛快。

長男の良夫が大分のんきなので、つい対比をね。

 

「車」の思いや願いが、運転する者に伝わることなないのだけれど(伝わればいいのに)、それぞれの車たちが日々考えていることがリアルすぎて。

いずれ廃車になるという悲しき運命だったり、所有者との別れ…。

車に限らず、身の回りの「物」は大切に!

望月家の隣人・細見氏を見習って。彼なくしては、解決に至らなかったのでは?というくらいの活躍ぶりでした。愛車のザッパも、幸せだろうに。

 

読み終えたときの気分が、良いです。

ドロドロの話もときには刺激的でいいのですが、せめて小説の世界くらいは正しい者に勝利してほしいなと思っちゃいます。

 

最後に

ファミレスの駐車場のシーンで。「オー!ファーザー」の登場人物らが、ぞろぞろと車から降りてくるではありませんか!作品どうしのつながりって、ファンは嬉しいですよね。

 

車を手ばなして、どのくらいになるだろう。

今では、念願の(!)ペーパードライバーです。

この本を読むたび、「もっと話しかけてあげれば良かったかな」なんて思っちゃいます。

毎週洗車して、きれいに乗っていたつもりではありますが。

出来ればこの先も、車を運転せずに暮らしたい。

 

年末に出した年賀状に「伊坂幸太郎さんの本にハマっている」と書いた私。

嘘がないよう、今年もまた彼の著作を読んで過ごそうと思います。

エッセイも面白くて、すきま時間に少しずつ読んではニヤついています。