伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」の登場人物
伊坂幸太郎著「オーデュボンの祈り」は、2003年12月に新潮文庫から発売された長編小説。
全464ページ。巻末の解説は、吉野仁氏。
単行本の刊行は、2000年の12月です。
伊坂さんのデビュー作。
今さら紹介するまでもないのですが、再読したので記録を残しておきます。
不思議の国をのぞいているような気分が味わえる、おもしろい一冊です。
では、主な登場人物の紹介から。
伊藤 28歳の主人公。
日比野 島のペンキ屋。
轟 島と外を行き来する男。
優午 喋るカカシ。
園山 元画家。
草薙 島の郵便配達員。
百合 草薙の妻。
桜 島の殺し屋。
田中 足が不自由な男。
城山 警察官。伊藤の同級生。
静香 伊藤の元恋人。
伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」のあらすじ
コンビニ強盗を試みるも未遂に終わり、逮捕された伊藤。
パトカーから逃走した彼は、轟によって「荻島」という孤島に連れて来られた。
荻島は、外との交流を断った小さな島。そこには優午という「喋るカカシ」が存在した。
優午は未来がわかるが、それを伝えることはしない。その優午が殺されてしまう。
なぜ、彼は殺されてしまったのかー。
伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」の感想
喋るカカシが登場する、なんともユニークな設定の話です。
そのカカシは優午と言い、鳥が好き。100年以上も前から荻島に存在していて、未来がわかるというのです。
この「荻島」には、ちょっと変な住人たちが暮らしています。
自分の判断で人を殺すことが認められている(!)、桜。
園山という元画家は、言うことが全て反対。
地面に耳を当て、音を聞いている少女もいたりして。独特です。
伊藤が島に来てほどなく、優午が殺されてしまいます。
物語の軸は、「優午が殺された件」と「島にないもの」。
幾度も問いかけられるのが「島にないものは何?」というもの。これが、気になって気になって。
後半は、一気に読んでしまいました。前半は(再読とはいえ)「変な島だよなあ」と、のんびり読んでいたのですが。
謎が次々に解けていき、伊藤がいうようにパズルのピースがはまっていくような感覚が味わえます。登場人物らの謎の行動。実はこれらには、仕掛けがあることに気が付くのです。
ところで、時々視聴しているEテレの「100de名著」。気になる回だけ観ています。
今年の夏に、「群集心理」を取り上げていたのですが、この回で紹介されていた「集団心理」の話が本作にも出てきたんです。
同じたとえ話の紹介があり、びっくり!こういうつながりって嬉しいですね。
恥ずかしながら、オーデュボンという学者がいたのを知りませんでした。
そう、この話は「オーデュボン」の「祈り」なんです。
何言ってんの?って感じかもしれませんが、読んでみるとなるほど!となるに違いありません。とても面白い本でした。
エッセイのこと
伊坂さんの「仙台ぐらし」というエッセイを読みました。
荒蝦夷の「仙台学」に掲載されたエッセイ、そして書下ろしの短編作品もありました。
エッセイの感想って、特にない…というか書きにくいですよね。
でも、これは面白かったのでご紹介。
前半は「~が多すぎる」というタイトルのエッセイ。
読んでみてわかったのは、伊坂さんが心配性だということ。
もっとどっしり構えている方なのかな?と思っていたのですが、全然違いました。喫茶店や出先での面白エピソードもあって、ほっこり◎
後半は、震災関連の話。
読み終えてみると、きっといい人なんだろうという印象が残りました。偉ぶっている感じがしないのと、物事の捉え方が謙虚だなあと。