まつりパンライフ

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桐野夏生「真珠とダイヤモンド」のあらすじと感想

桐野夏生「真珠とダイヤモンド」の登場人物

桐野夏生著「真珠とダイヤモンド」(上・下)は、2023年2月に毎日新聞出版から発売された小説。

上巻365ページ、下巻282ページ。

初出は「サンデー毎日」2021年4月4日号~2022年7月10日号。単行本化にあたり、加筆・修正をしたとの記載がありました。

 

ポッドキャストの配信で、桐野夏生さんが大竹まことさんの「ゴールデンラジオ」に出演されていたのを聞きました。曜日パートナーの小島慶子が桐野さんのファンでいらして、新刊が出るとゲストに呼んでくれるんですよね。とても嬉しい。毎回気付かされる事があり、何度も聞いてしまう。

今回、大竹さんの感想が、冒頭の箇所がとにかく「こわい」と。

それに桐野さんが「そういう感想は初めてです」と返していたのが、なんだかおかしくて。

 

では、主な登場人物の紹介です。

伊東水矢子 証券会社の事務社員。

小島佳那 証券会社のフロントレディ。

望月昭平 証券会社の社員。営業。

 

浅尾瞳 証券会社のフロントレディ。

吉永 証券会社の課長。

田畑 証券会社の課長。

 

美紀 佳那の姉。

須藤保 美紀の元恋人。医師。

玲子 ゲイバーのママ。

美穂 ゲイバーの従業員。

 

山鼻 長崎のヤクザ。

美蘭 山鼻の愛人。

南郷明星 占い師。

亀田優成 株屋。

川村伸之 「優成ボイス」の社員。

 

桐野夏生「真珠とダイヤモンド」のあらすじ

時は1986年。

萬三証券株式会社の福岡支店に入社した、3人の若者たち。

高卒の水矢子、短大卒の佳那、大卒の望月である。

3人は皆、東京に出るという目標を持っていた。

 

バブルの時代に、仕事で成果を出して上に上にといく者、孤独に苛まれる者、好景気の恩恵を享受できない者たちの先にあるものはー。

 

桐野夏生「真珠とダイヤモンド」の感想

「バブル」、という特殊な時代の証券会社が舞台となっています。

こういう時代があったなんて、本当ですか?と、信じられない思いで読み終えました。当時、金融業界に身を置いていた人たちの中には、この本の登場人物たちに近い経験をした人もいるのだろうと思うと後半の壮絶さに、胸がキューっとなります。

 

さて、この物語は水矢子、佳那、望月の3人の視点から描かれています。

3人とも決して裕福ではない家で育ち、東京に出るという共通の目標がありました。

水矢子は東京の大学へ進むことを目標に暮らしていて、佳那は仕事で成果を出したい、という野心を持っていました。

しかし、今以上に女性の立場が弱かった時代。佳那は苦戦します。

(このあたり、読んでいて苦しかった…。)

 

営業で入社した望月でしたが、とにかく気が利かない男性。

周りの空気を読むことが苦手で嫌がらせをされるも、調子の良さだけで営業成績を伸ばしていくのです。始終、あぶなっかしい印象。

望月は佳那と組み、東京へ進出します。

順調かと思われた2人ですが、そうはいきません。

バブルは、やがて終わるのですから。

 

大竹さんが言っていた「こわい」という感想、確かに!という部分もたくさんあります。特に、下巻。男女間のもつれやら、逆恨みやら。

 

バブル期、水矢子のようにひっそりと生きていた人ももちろんいたのでしょう。彼女のような立場から、世の中が描かれているのも桐野さんならではの作品だと思いました。

 

 

 

まとめ

桐野さんはバブルの頃の話を書いたことがなかった、と話されていました。

自分はバブル期を知らない世代ですが、確かに存在したのだなあと不思議な感覚になりました。この時代に大人だった人たちは、今でも当時の感覚を覚えているのかなあ。どんな気持ちで暮らしていたのかなあ。

 

どんな時代でも、苦しいことや辛いことってあるのだと思います。

こういう小説を読むたび、やりきれなさと心強さが同時に迫ってきます。

先日母親と電話で話したとき、この本の話題になりました。新聞に取り上げられていたそうで、気になっていたとのこと。もちろん私は「面白かったから、ぜったい読んで!」と推しておきました。読んでくれるといいな。