まつりパンライフ

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真梨幸子「初恋さがし」のあらすじと感想

真梨幸子著「初恋さがし」の背表紙

真梨幸子「初恋さがし」について

真梨幸子さんの「初恋さがし」は2019年5月に新潮社より発売された短編集。

 

初出は2013年~2019年の「小説新潮」。

加筆・修正し、最終章の「センセイ」を加えた一冊。

 

7本の短編・全273ページ。

 

私が真梨幸子さんの本を読むのは、今回が初めて。

ミステリーの中でも「イヤミス」と呼ばれる分野の小説を書かれる方なのだとか。

 

真梨さんの作品を手に取るきっかけも、ラジオでした。

 

ニッポン放送「あなたとハッピー」内のコーナーで、中瀬さんが推していたのです。

カッキー(垣花アナウンサー)も、面白い!みたいなことを言っていたような?記憶があるので気になっていた一冊。

 

今回も簡単に、あらすじと感想をまとめておこうと思います。

 

「初恋さがし」の装画

 

真梨幸子「初恋さがし」のあらすじ・感想

エンゼル様

JR高田馬場駅近くの雑居ビル4階にある、ミツコ調査事務所。

所長は山之内光子。

 

昔の親友・喜和子を探してほしいという依頼人がやってきた。

依頼人はがんを患っていて時間がないと言うが、喜和子を探す目的とは…?という話。

 

1話目にしてヘビーで嫌な場面が続き、正直な感想としてはなかなかキツイものがあったなと思います。

「エンゼル様」なんていうタイトルだが、ああ、パンチのある下ネタよ…。

 

語り手が所長の光子なのかと思いきや、喜和子に代わり、最後は依頼人が事の顛末を述べるというもの。

依頼人の執念がすごすぎる。

 

トムクラブ

ミツコ調査事務所に、ある男性の素性と素行を調べてほしいとの依頼が来た。

男性の名は鰻上雅春。

 

依頼人曰く「トムクラブ」という名の恐ろしい内容のサークル活動をしているのではないかという。

 

一方、鰻上雅春もミツコ調査事務所に依頼人として来ていた。

ストーカー被害にあっているという。

 

どちらの言い分が正しいのか、という話。

これはグロテスクな描写が多くて面食らってしまいましたが、結末はさらに驚きです。

 

サークルクラッシャー

ミツコ調査事務所にやってきた依頼人・住吉隼人は、ある女性を探してほしいという。

20年前に恋仲だった女性で、子供が出来たが捨てたのだというが…。

 

この話は、あだ名に伏線が張られていて、読み返すとなるほどなとなります。

最後に明かされる依頼人の目的や正体に愕然とします。

 

この章で登場する弁護士・池上隆也によって風向きが変わりますね。

 

エンサイクロペディア

ミツコ調査事務所にやってきたのは、日高定子という風俗嬢の依頼人。

ウェブの百科事典「インターペディア」に自分の名前が出ているという相談だった。

 

一般人であるはずの依頼人の項目を作り、記事を編集しているのは誰?というあらすじ。

 

この章では所長の光子が窮地に立たされ、池上弁護士が意味深なことを告げていきます。

 

私の頭の中では「あの人がこの場面で出てくるって、どういうこと!?」と混乱し、ページを戻して読み返しました。

 

きちんと整理して読み進めないと、こんがらがります。

 

真梨幸子、短編集の表紙タイトル画像

 

ラスボス

池上弁護士に助けを求めた光子の運命は?という章。

タイトルに「ラスボス」とあるように、事件の黒幕に迫っていく。

 

池上弁護士は好奇心から事件を探ってしまうのですが、これまた後味の悪い終わり方。

 

お人好しで、すぐに人を信じる光子のような人が興信所の所長をすると、こんな結末になるのでしょうか…?

 

初恋さがし

ミツコ調査事務所へ相談に来たのは、38歳の主婦の依頼人。

依頼内容は、初恋の人を探してほしいというもの。

 

聞けば、彼の夢をよく見るのだそうだ。

 

調査を開始するが、浮かび上がってきた人物像は…?というストーリー。

 

これも後味がねえ。

 

知らなくてもいいことって、あるものですね。

人は、あまりにもショックな出来事があると記憶が改ざんされると言いますから。

 

センセイ

とある人物が、これまでの事件を回想していく最終章。

 

タイトルに込められた意味と、あっと驚く新事実!

 

すっかり作者の思うつぼでしたよ私。

真梨幸子さん、すごい方ですね。

 

最後に

イヤミス」(嫌な気持になるミステリー)と呼ばれる分野の小説は久しぶりでした。

 

今回読んだ初恋さがし は、期待を裏切らない後味の悪さですね。

私の読解力がないために頭が混乱して、何度も読み返してしまいましたが、じわじわと嫌な気分になる話ばかりでした。

 

作中に「発情期の鶴のような声」という表現が度々でてきます。

ちょっと分かりけど、なんかツボでした。