朝倉かすみ「平場の月」の登場人物
朝倉かすみ著「平場の月(ひらばのつき)」は2018年12月に光文社から発売された小説。
第161回・直木賞の候補作に選ばれた、書き下ろし作品。
全246ページ。
今回も、あらすじと感想をまとめてみます。
まずは、主な登場人物の紹介から。
青砥健将 印刷会社勤務の50歳。離婚歴あり。実家で一人暮らし。
須藤葉子 青砥の同級生。病院の売店勤務。夫とは死別。
安西知恵 青砥と同じ印刷会社のパート。同級生。
ウミちゃん 須藤の同僚。同級生。情報通で、口が軽い。
みっちゃん 須藤の妹。
ヤッソさん 青砥の職場の派遣。飲み仲間。60代。
登場する地名(朝霞、新座など)から、舞台となっているのは埼玉県だと思われます。
朝倉かすみ「平場の月」のあらすじ
青砥は、病院の売店で勤務していた中学の同級生・須藤葉子と35年ぶりに再会する。
須藤葉子は、青砥が中学生の頃に告白して振られた相手だった。
一旦は東京に出たものの、地元に戻って一人で暮らしているという。
再会をきっかけに、2人の交流が始まる。
地元で50歳を迎えた同級生たちは、親の介護、自らの病気や不調、子供の問題などを抱えて生活していたーという、あらすじです。
訃報を耳にする…というところから物語が始まります。
交際していたにもかかわらず、同級生の口から死んだことを知らされることになるとは。
朝倉かすみ「平場の月」の感想
「平場の月」では冒頭に結末が書かれてあり、そっか、死んでしまう結末なのか…と思いながら読み進めました。
私は結末を知ってから読むのが好きなので、非常にすっきりとした気持ちで読むことが出来ました。
※ネタバレサイトで最後を知ってから読むこともあるほどです。
地元に戻ってきてばったり同級生に会う、っていかにもありそうですよね。
50歳という年齢設定は、そろそろ体のあちこちに不調が出てくる年代(?)なんだろうと感じました。
実際、青砥と須藤が再会したのも病院でしたし。
読んでいて心地よかったのが、須藤の口から発せられる素っ気なさや、会話の飾らなさ。
「女」を前面に出してこない感じが良かったですねえ。
とは言え、過去の苦い恋愛経験を自ら打ち明けるシーンもあり、人間らしいところや情熱的(と言っていいものか)なところもあるのか、と意外な気もしました。
扉のページに描かれている、このワンピース。
読み終えてから見てみると、あのワンピースかな…?なんて思います。
表紙カバーを取ると、作中に登場するアイテムが描かれていました。
面白い仕掛けですよね。
青砥が、小柄で華奢な須藤に対して感じた「太い」という印象。
中学の頃に感じていた印象が、50歳になっても変わらない。
作中、度々出てくる「太い」という表現に、「どういうことだろう?」そして「どうして?」と私なりに考えていました。
これにはきちんとした理由がありました。
青砥が納得できた事情が明かされます。
須藤葉子が太くならざるを得なかった背景も、印象に残っています。
結果的には死んでしまうのでハッピーエンド、とは言えないのかもしれませんが、大人の恋愛小説ですね。
献身的な青砥の姿には、ぐっときました。
青砥、いい人なんですよ。
こんな魅力的な中年男性、いるのかな。
最後に
はじめて、朝倉かすみさんの本を読みました。
過去の著書を検索してみましたら、面白そうな作品をいくつか見つけましたので読んでみようと思います。
タイトルに「平場」 とあるように、登場人物は皆、普通の人たちです。
それゆえにこういう事もありそう、と最後まで楽しめました。
小説の設定というのは、日常とかけ離れていることが多々あるように思います。
この作品では登場人物にしても「そういう同級生、いた~!」みたいな感じがあって新鮮でした。