まつりパンライフ

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米澤穂信「Iの悲劇」のあらすじと感想

米澤穂信「Iの悲劇」の表紙

 

米澤穂信「Iの悲劇」について

米澤穂信「Iの悲劇」は、2019年9月に文藝春秋から発売された本。

 

第一章から第六章に加え、序章と終章が収録。

全343ページ。

 

初出は「オールスイリ」、「オール讀物」。

書き下ろし作品も収録されています。

 

米澤さんのミステリー作品が好きな私。

この作品も発売当時に入手したものの、積読本の中にまぎれておりました。

 

思うように外出できず、もんもんとした日が続きます。

十分すぎるほど読書の時間が出来た、と捉え、過ごしています。

 

まずは、全話に共通して登場する人物の紹介から。

皆、公務員です。

 

万願寺邦和 「蘇り課」に配属された主人公。出世希望。

西野秀嗣 定時に帰りたい、50すぎの課長。

観山遊香 学生気分が抜けない、2年目の新人。

 

米澤穂信著「Iの悲劇」中表紙

 

米澤穂信「Iの悲劇」のあらすじと感想

南はかま市・Iターン支援推進プロジェクトのため、「蘇り課」に配属された3人。

 

※Iターンは、田舎に移住することをいいます。

 

「Iの悲劇」というタイトルは、「Iターン」から来ているのでしょうね。

 

高地の山間部にある「蓑石」という集落に移住者を呼ぼう、というストーリーです。

 

不気味な序章・「Iの悲劇」からはじまり、終章・「Iの喜劇」まで続きます。

それぞれのあらすじと感想を記します。

 

軽い雨

第一陣としてIターンの推進プロジェクトに応募してきたのは、久野夫妻と阿久津一家の2世帯。

 

自給自足の生活がしたい、と語る久野さん。

子供をのびのびと遊ばせたい、と語る阿久津さん。

 

移住してきて早々、久野さんが「迷惑していることがある」と苦情を言いに来た、というあらすじです。

 

定時に帰ることしか考えていないような西野課長が、実はただ者ではない、と印象付けられた第一章。

 

万願寺のもとへ持ち込まれた隣人トラブルと、その後に起きた事件。

ミステリーの色も濃く、次はどんな移住者がやってくるのだろう?と続きが気になります。

 

浅い池

蓑石に新たに移住してきた世帯を集めて、開村式が行われた。

ある日、移住者のひとりである牧野さんが「育てている鯉を盗まれた」と言ってきたーという話。

 

主人公・万願寺の、実家での場面があるのですが、地方における問題点が次々と露呈しているな、という感想を持ちました。

なじみの寿司屋が閉店したり、両親が営む定食屋をたたむことにした背景には、高齢化の問題が。

 

さて、牧野さんの鯉がいなくなった件ですが…

ずっこけてしまいそうなオチが待っています。

 

重い本

久保寺さんという移住者は、50歳の歴史研究家で本も出している。

近所の子供に本を貸しているのだというが、その子供が迷子になっていると連絡が入るーというあらすじ。

 

この章は、ハラハラしながら読みました。

子供の生死に関わる話は、手に汗握ります。

 

米澤穂信著「Iの悲劇」の背表紙画像

 

黒い網

河崎さんという女性は夫婦で移住してきたのだが、すぐに感情的になるため扱いが難しく、隣人ともトラブルをおこしていた。

そんな中、秋祭りで、突然河崎さんが倒れてしまうーというあらすじです。

 

河崎さんが夫とともに蓑石にやってきた理由が、人工物を嫌うためなのですが、こだわりが強すぎて生きづらそうだなこの人、と思いました。

 

さて、彼女が倒れた理由ですが…

食中毒かと思いきや、いやはやこんなトリックがあったとは。

 

深い沼

万願寺と弟との、電話での会話。

弟の提案は、万願寺には受け入れることの出来ないものであったがー。

 

やりあったようでいて、実は兄思いの弟なのでしょう。

 

西野課長に関する妙な噂を耳にする万願寺。

やはりこの課長、ただ定時に帰るだけの人ではない…!

 

白い仏

蓑石には円空が彫った仏像があると知った移住者・長塚さんが、観光に活用しようと言い出した。

しかし、仏像を預かっている若田夫婦はそれを拒否している。

 

仏像を見せるよう説得して欲しい、と長塚さんが万願寺にかけあってきたーというあらすじです。

 

万願寺と観山が若田夫妻宅を訪れるのですが、想定外のことが重なり、万願寺が窮地に立たされてしまいます。

彼が遭遇した奇怪な出来事には、血の気が引きました。

 

この謎はこの章では明らかにされません。

 

終章「Iの悲劇」で全ての真相にたどり着きます。

 

米澤穂信「Iの悲劇」の裏表紙・画像

 

まとめ

連作の短編集です。

 

ターゲットになる移住者ごとに章が区切られていますので、ちょこちょこ読んでも楽しめます。

あ、でもラストで明かされる全ての謎が気になるでしょうから、まとめて読むのもおすすめです。(おいおい、どっちだ!)

 

万願寺の愛車であるインプレッサ・スポーツが気になって画像検索してしまいました・笑。

また、公務員ならではのブラックジョークも程よく散りばめられています。