まつりパンライフ

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真梨幸子「ツキマトウ」のあらすじと感想

真梨幸子「ツキマトウ」の表紙

真梨幸子「ツキマトウ 警視庁ストーカー対策室ゼロ係」の登場人物

真梨幸子著「ツキマトウ・警視庁ストーカー対策室ゼロ係」は2018年7月にから発売された小説。

 

初出は「野性時代」。掲載は2016年11月号~2018年2月号。

単行本化にあたり、書き下ろしを加えて加筆修正したとのこと。

 

全299ページ。

 

プロローグでは、ストーキングの歴史や変遷などが記されています。

規制が始まったのは最近だけど、つきまとうという行為は昔からあったわけで…というようなことです。

なるほど、ごもっとも、ですね。

 

それにしても真梨さんの比喩表現って、独特でユニーク◎

ページをめくる手がとまりません。

 

ではいつもように、主な登場人物の紹介から。

 

橋田結花 警視庁・ストーカー対策室ゼロ係所属。

二宮隆 警視庁・ストーカー対策室ゼロ係所属。結花の後輩。

 

浜田七緒子 ブロガー。

浜田靖彦 七緒子の夫。フリーの編集者。

沢口圭子 七緒子の元同僚。 

藤川賀津夫 七緒子の元夫。

藤川祐里恵 賀津夫の元妻。

 

その他、caseごとに人物が多数登場します。

 

真梨幸子「ツキマトウ」のあらすじ&感想

警視庁生活安全総務課、ストーカー対策室、特別対策ゼロ係。

略して、警視庁ストーカー対策室ゼロ係。

 

ここには、つきまといで困っている、という人々からの相談が持ち込まれます。

 

プロローグ(case0)から始まる物語は、case1~7と続き、最後の「追記」という構成。

印象に残った章のあらすじ&感想をまとめます。

 

真梨幸子「ツキマトウ」の背表紙画像

 

プロローグ(case0)は、ストーカーまがいの「ユスリ」とも言える状況のお話。

被害者は、どうしてそんな無茶な要求を受け入れるのよ、とヤキモキ。

 

case1(ミュール)では、有名ブロガーのナオコが登場。

ナオコと関わりがあった人々が語るナオコの本性…一体どれが真実なのか?と注意深く読み進めました。

 

男性をダメンズに仕立て上げてしまうとか、病的に支配欲が強いとか、なかなかの言われようで、インパクトのある女性です。

 

case2(アンビギュイティ)では、リベンジポルノの案件が取り上げられています。

インターネットが普及していなかった時代には無かった犯罪です。

便利な反面、恐ろしい事態にも発展してしまう時代になりましたね。

 

今回のケースにおいては、ちょっと違った意味で恐怖なのですが。

 

case4は、まんまとやられました!

真梨さん、ミスリードが巧すぎます。でも、ほっこり。

 

真梨幸子著「ツキマトウ」の目次

 

case5(ファン)は、ご当地アイドル・牛川ミルクがストーカー被害に遭うという事例。

個人的に、この事例のラストが最も嫌な気持ちになりました。

 

case7(イットカン)は、いわば解決編。

意外な犯人、そして動機や手口が明かされます。

 

※作中に登場する「先生」と呼ばれる和製レクター博士の正体は、ラストに明かされますのでお楽しみに☆

 

「ひじきのような髪」だとか「くされ干しぶどう」(あだ名)という表現が可笑しかったです。

真梨さん、どこからこの奇天烈なワードが浮かんで来るのだろう?

でも好きなんです、こういうじわじわとこみ上げてくる笑い…!

 

まとめ

ストーカー被害。

身近な人が被害にあっている、というのを耳にしたことはありませんが、迷惑極まりない行いです。

 

つきまとい行為をここまでやるのか、それはアウトだろう、とあきれるばかり。

ぶっ飛びすぎ。 

 

本作では、渦中にいる双方の視点から物事をみることが出来ました。

それによって感じたのは、「思い込み」によって被害者になったり加害者になったりしてしまう場合があるのかもしれない、という点です。

 

巻末の参考資料の中に、中野信子さんの「サイコパス」があったのを目にして妙に納得した次第。

 

被害妄想が過ぎるのも考え物ですが、意図せずに加害者に仕立て上げられてしまう例には恐怖の念を抱きました。

この作品も期待通り、後味が悪くて大満足