奥田英朗「純平、考え直せ」の登場人物
奥田英朗著「純平、考え直せ」は、2011年1月に光文社から発売された小説。
初出は「小説宝石」。掲載は2009年9月~2010年8月号。
全277ページ。
インパクトのある表紙にひかれ、選んだ本です。
選んだと言っても、奥田さんの著作はどれも面白いのですけれど。
本作も期待を裏切らない面白さで、すぐに読み終えました。
ただ面白いというだけではなく、色々と思うことが見つかるというのも、彼の著作の魅力です。
では、主な登場人物の紹介から。
坂本純平 21歳の主人公。
北島敬介 純平の兄貴分。
早田義則 「早田組」の親分。
安藤 純平と同部屋の、元暴走族。
カオリ ショーパブのダンサー。
キャサリン ショーパブのダンサー。ニューハーフ。
理沙 派遣社員。
加奈 派遣社員。
ゴロー 歌舞伎町で出会ったゲイ。
西尾圭三郎 元大学教授。
山田 新宿署の刑事。
奥田英朗「純平、考え直せ」のあらすじ
新宿歌舞伎町では顔の知れた、ハンサムで気のいいやくざ・純平。
歌舞伎町に居場所を見つけた彼は、組員20人ほどの「早田組」に所属し、雑用をこなす日々。
ある日、親分から「鉄砲玉」の役目を担わされた純平。
実行に移すまで、3日間の自由と30万円を与えられた。
犯罪に手を染めようとしている主人公に、考え直すよう忠告してくれる者もいるがーというあらすじ。
奥田英朗「純平、考え直せ」の感想
正直な感想を言うと、ヤーさんが出てくる小説はどうかな…
という気持ちを持ちつつ読み進めたのですが、滑稽な展開で、すぐに物語の中に引きこまれました。
というのも、主人公の純平が憎めない奴でして。
やくざという設定ながら、女性が相手だと強く出られなかったり、騙されたり、からかわれたり。
頼まれると、断れない。
21歳という年齢は、眩しいほどに若いです。
全く相手にされませんが、カオリというダンサーに好意を抱く姿も、初々しい。
親分から直々に「殺ってこい」と言われ意気込む主人公ですが、その後、どういうわけか個性的な面々が彼の前に登場。
奥田節が炸裂で、ニヤニヤしてしまいました。
元大学教授の男性は、「グレることに決めた」と家出した68歳。
純平に手を貸そうとするも、運悪く紛争に巻き込まれてしまう。
悪徳刑事からは、ちょっとした「おつかい」を頼まれる。
焼肉屋で出会った加奈には、うっかり計画を話してしまう純平でしたが、強く反対されます。(そりゃそうだ。)
なんとかならぬものかと考えた加奈は、ネットの掲示板に書き込みをします。
結果、見ず知らずの者たちからレスを返されるという流れに。
行為を抱いた人が、殺しに手を染めようとするのは悲しいです。
純平を心配した人々のレス内容も、よ~く練られていました。
本気で心配する者、煽る者、ブラック過ぎるジョークを放つ者など。
ハンドルネームも必見。
生まれ故郷を訪ねる、という行動は意外な気がしました。
昔つるんでいた仲間に会いたい、との思いからの帰郷だったようですが、母親の居場所を知ることにー。
騒がしかった純平の3日間が、終わろうとします。
さて純平は「考え直す」のか否か。
まとめ
純平にとっての「青春」が描かれています。
21歳にして、一般の人々は経験しないであろう、闇の社会に足を踏み入れてしまった彼。
啖呵の切り方やらハッタリのかまし方が見事だな、と妙に感心してしまいました。
彼らの声が、リアルに聞こえてくるような描写。
ちっさい見栄の張り合いも、微笑ましく感じてしまうほど。
主人公はチンピラだけれど、つい応援したくなってしまうような人柄でした。
元大学教授の発する言葉が、刺さりました。
間違いなく変人なのだけれど、さすがは元教授。