奥田英朗 短編集「家日和」について
奥田英朗著「家日和」は、2010年5月に集英社文庫から発売された短編集。
単行本は2007年4月に発売。
初出は「小説すばる」。(掲載時期は2004年~2006年)
6本の短編に加え、文庫版の巻末には益田ミリさんの漫画「鑑賞」も収録。
全258ページ。
続編の「我が家の問題」を読み、面白かったので本作品も読もうと思った次第です。
読んだ後、スッキリとした気分になれました。
奥田英朗「家日和」のあらすじと感想
6本の短編、それぞれのあらすじと感想をまとめます。
サニーデイ
42歳の紀子は、二人の子を持つ専業主婦。
ネットオークションに出品し、落札されることに快感を覚えるようになった。
紀子のIDは、サニーデイ。
ネットオークションは、落札したことも出品したこともない未知の分野でした。
小説を通じ、輪郭が見えてきました。
面白い世界ですね。
生きがいを見つけたような紀子の高揚感に、笑ってしまいました。
ここが青山
主人公は36歳の湯村裕輔。
会社が倒産したため、妻の厚子が職場復帰することになった。
裕輔は、4歳の息子の世話と家事を担当することになる、というあらすじ。
タイトルの「青山」は、「せいざん」と読みます。
人間到る処青山あり、という故事からの引用だそうで、人間は「じんかん」と読むのだとか。(←知らなかった!)
厚子は良く出来たお嫁さんだなあ。
自己主張は少々強いけど、夫を責めず、適度に褒める。
…これが、なかなか難しいんですよね。
裕輔の料理が上達していく姿が眩しく、息子のために作るお弁当はとても美味しそう!
家(うち)においでよ
主人公は38歳・営業職の田辺正春。
妻の仁美が家具と共に家を出て行ったのを機に、自分の「趣味の部屋」にしようと奔走するーというあらすじ。
正春が家具類を買い揃えていく様が、小気味よかったです。
お金と時間に余裕がある買い物って、なんていいものなんでしょう・笑。
そして仕事終わりには同僚を呼び、皆でわいわい。
妻・仁美との関係がどうなったかは、読んで確かめて下さい。
もし私が自分好みの部屋にしていいよと言われたなら、「掃除しやすいシンプルな部屋」でしょうね。嗚呼なんとつまらない人間!
グレープフルーツ・モンスター
在宅で働く主婦が、家にやってくる営業の担当者に興奮してしまい、おかしな夢を見てしまうという話。
これは…感想が難しいです・笑。
書きづらいので、ぜひ読んでください。
んなアホな!とツッコミを入れてしまう展開です。
夫とカーテン
主人公の春代はイラストレーターをして収入を得ていたが、夫の栄一が会社を辞めてカーテン屋を始めるという。
言い出したら聞かない栄一の暴走、そしてその行動力には呆気にとられました。
でも、どこか憎めないキャラクター、というところに奥田さんの作風が出ています。
妻と玄米御飯
主人公の大塚康夫は42歳の小説家。
妻の里美がロハスにはまり、玄米御飯が出てくるようになった。
11歳の双子の息子たちには不評であるが、さてどうなる?という最終話。
作中に出てくる康夫なりの「夫婦のマナー」が妙にしっくりきました。
わかってるなあ!
小説家の苦悩が描かれているのですが、ホント大変な職業…。
締め切りに追われるって、考えただけでお腹が痛くなりそうな状況です。
この大塚家は唯一、続編でも登場する家族です。
双子の息子たち、この頃はまだ小学生だったのね。
最後に
巻末の益田ミリさんの漫画「鑑賞」がとても良かった。
漫画ってあまり読まないのですが、面白いものですね。
自虐的すぎるオチにクスッとしましたが、内容にはジーンとさせられるものが。
平成の家族を描くシリーズ、とされていて続編は冒頭で紹介した「我が家の問題」、そして第三弾が「我が家のヒミツ」です。
こちらも以前レビューを書いたのでリンクをはっておきます。
シリーズ化とはいえ短編集なので、読む順番はあまり気にせずとも楽しめます。
益田ミリさんの漫画が収録されている文庫版。
機会があったら手に取ってみて下さい。