林真理子「胡桃の家」について
林真理子著「胡桃の家」は、1989年11月に新潮文庫から発売された短編集。
全243ページ。
単行本は、1986年8月に新潮社から刊行。
巻末の解説は川本三郎氏です。
林さんが、自身のユーチューブ動画で紹介していました。
彼女の作品は割と読んでいると思っていましたが、ここまで前のものは読んでいませんでした。
自分のうちのことを書きたいと思って書いたのだそうです。俄然興味がわき、さっそく読みましたところ、面白かったのでご紹介◎
4本の短編が収録されています。
それぞれのあらすじ&感想をまとめます。
林真理子「胡桃の家」のあらすじと感想
玉呑み人形
槇子は、父の源吉、母のとく子、兄の圭一と暮らす。
隣りに暮らす祖母のきぬは「三輪田屋菓子店」を営んでおり、槇子を可愛がってくれたが、娘婿の源吉のことは嫌っていたー。
戦争によって、思っていたような生活が出来なくなってしまった槇子の一家。
戦後は、こういった事が珍しいことでもなかったのかもしれませんが、この話の場合は、源吉が今でいう「ダメンズ」。戦地から戻ってきた彼は、元の会社に戻ることなく妻の実家の離れに居ついてしまったのです。
まだ少女の槇子は、叔母や祖母が父の事を良く思っていないことをちゃんと理解していて、戸惑う様子が描かれています。
それにしても、結婚することよりも大学への進学であったり、職に就くことの大切さを娘に言って聞かせるとく子、素晴らしいと思いました。この時代(昭和34年頃?)にこういう考え方が出来た女性、どのくらいいただろう。
この話の続きが、最終章の「胡桃の家」です。
女ともだち
大学進学を機に上京した淳子は、結婚し1児の母になった現在も都内で暮らしていた。
学生時代、同じサークルだった吉岡暁子が仙台にいると耳にする。
東京生まれ東京育ち、美人の暁子が仙台で暮らしているという事実に、清々しさを感じてしまう主人公だったがーという話です。
田舎から出てきた淳子は、大学で出会った東京育ちの暁子が眩しくみえます。
夏休みに、暁子とその姉と共に旅行することになったのですが、行った先での出来事に、淳子は驚いてしまいます。
林さんらしい作品だなあ、と思いました。
私の苦手な「女同士あるある」が、ふんだんに盛り込まれております。マウント合戦・笑。よくこんなに思いつくなあ。そして、オチが秀逸◎


シガレット・ライフ
主人公は、煙草を嗜む映画ライターの女性。
今の恋人は禁煙に成功しており、彼女にもやめてほしいと思っている。
煙草に関して、色んな考えを持つ男性たちと付き合ってきた彼女の回顧録。
昔に比べると、煙草を吸う人を見かけなくなったような気がします。
禁煙する人も増えたようですし、時代の流れでしょうか。
胡桃の家
「玉呑み人形」の続編です。
大人になった槇子は、故郷を離れて都内で生活。離婚も経験した。
父は亡くなり、62歳になった母のとく子はひとり暮らし。
菓子屋を継いだ叔父の実が、家を壊してテナントビルに建て替えるのだと言うー。
思い入れのある家が取り壊されることになる、というのはどんな気持ちになのでしょう。とく子は生家を離れ、息子一家と暮らすことになるのだといいますから、複雑です。
槇子ととく子の関係性も、リアルに描かれていました。
母と娘って、遠慮がないんですよね。
まとめ
どの章も、面白かったです。
ユーチューブでご本人が紹介しているのを見なければ、おそらく読まずじまいだっただろうと思います。こんなに素敵な作品を、読まずにいたのがもったいない!
ただ、表題作が「家」のことだけに、学生時代に読んでいてもピンと来ない部分もあったかもしれません。
生まれた家を出て、両親と離れて暮らすようになってから感じることってあるんですよね。他人と暮らす難しさも学びました。
「玉呑み人形」は、林さんの父親のことを書いたようです。
ギャンブル好きで、発明狂だったとか。