まつりパンライフ

家で焼いたパンと読んだ本の備忘録、愛用のキッチングッズの紹介をしています

村山由佳「Row&Row」(ロウ・アンド・ロウ)のあらすじと感想

村山由佳「Row&Row」の登場人物

村山由佳著「Row&Row」(ロウ・アンド・ロウ)は、2023年3月に毎日新聞出版から発売された長編小説。

初出は「サンデー毎日」。2021年1月~2022年4月。

全533ページ。

 

大好きな村山さんの新刊!わーい!と、何の情報も入れずに読み始めたら恋愛小説でした。

恋愛小説は、うっ…と胸やけしたようになってしまうので、読まない時期があったのです。しかし、これはとっても面白かったのです。ぜひ紹介させて下さい。

夫婦の話でもあって、妻側と夫側の視点どちらからも描かれています。村山さんの恋愛小説、やっぱり好きだなあと思った次第。色っぽいんです。

 

では、主な登場人物の紹介です。

 

早瀬涼子 広告代理店勤務。43歳。

早瀬孝之 涼子の夫。美容師。

 

小島美登利 20代のネイリスト。

野々村一也 孝之の元同僚。美容師。

山崎  孝之のアシスタント。

矢島広志 アート・ディレクター。

黒田輝彦 涼子の上司。部長。

 

村山由佳「Row&Row」のあらすじ

都内の広告代理店で働く涼子は、美容師の夫の夢を叶えるべく、郊外に店舗を兼ねた一軒家で暮らしていた。

涼子の3つ下の夫・孝之は、念願の住居兼店舗を手に入れたはずだったのだが、妻との関係がなんとなくうまくいっていないのを感じていた。そんな中、アシスタントが辞めると言い出した。新たに、女性を雇うことにしたのだがー。

 

居心地の悪さを感じていたのは、妻の涼子も同様だった。

 

村山由佳「Row&Row」の感想

結婚して13年の、妻と夫。

細かい気持ちの揺れがどちら側からも丁寧に描かれていて、物語の中に埋もれていく感覚になりました。

自分はどこにも属していないし、誰に共感するでもないのですが、どっぷりはまりました。

 

この夫婦は自分たちとそう年代が変わらないのですが、職業や生活の形態が全く違う点が、読み手の自分にとってはよく作用したのかもしれません。なまじ類似点を見つけようものなら、前のめりで読んでしまうかもしれないなあ、と。

 

もし自分がこの立場だったらどうかな、とか、このシチュエーションではどうかな、とかあれこれ妄想しながら読み進めてしまう場面もありました。というのも、涼子が働いている姿が、とにかくかっこいいのです。憧れてしまう。

 

夫婦って、難しいー。

涼子と孝之のすきまは、広がるばかりなのです。

互いの気遣いがすれ違うさまに、ひりひりしました。

 

孝之の見栄っぱりなところには人間くささを感じましたが、これでは自分も疲れてしまいそう。

若い女性アシスタント・美登利と共に働くようになってからは活力的になりますが、孝之が事故に遭いーというところから、涼子との夫婦関係を見つめ直さねばならない状況になります。

 

恋愛小説って、昔は自分と重ねて読むことが多かったけれど、「小説の世界のお話」として読む方が楽しめるような気がしています。私の場合は。

村山さんの作品に描かれるエロス、毎回ドキドキしちゃいます。

 

 

その他あれこれ

最近読んだ本の中で、特に面白かったエッセイの紹介を。

「じゃむパンの日」というタイトルのエッセイ集。

著者は、赤染晶子さん。(芥川賞作家でいらっしゃる。)

 

最初、ラジオ(宇多丸さんの番組)で岸本佐知子さんが「宇宙一おもしろい」と言っていたので(うろ覚え)、これは絶対読もう!と。

さらに、高橋源一郎さんの番組でも取り上げられていて、ますます期待。

かなりハードルが上がった状態で読みましたが、これは面白い。

笑っちゃうほど可笑しい箇所、多々。

 

55篇のエッセイが収録されています。

キレのある文章が、心地よいのです。

京都出身の方なのですが、北海道で暮らしていた頃の話もあったり、家族の話もあったりして。おじいさまの冗談もクスッとしちゃうし、おばあさまの「何くそっ!」精神も実にたくましく、好ましい。

 

ラストに収められている岸本佐知子さんとの交換日記が、特に良かった◎

私は岸本さんが好きなので、この箇所から読み始めました。

この2人のユーモアセンスときたら、もうねぇ。

赤染さんの文章が、もう生み出されることがないのかと思うと寂しい。

過去作品も読んでみようかな。