まつりパンライフ

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奥田英朗「罪の轍」あらすじと感想

奥田英朗「罪の轍」表紙画像

 

奥田英朗「罪の轍」について・登場人物

奥田英朗著「罪の轍」は、2019年8月に新潮社より出版された長編のミステリー小説。

 

初出は小説新潮(2016年~2019年)。

※「霧の向こう」を改題し、単行本化。

 

全587ページ。

 

本作は、久米さんがラジオ番組内でチラッと紹介していたので、気になっていた一冊。

久米さんは思ったよりも読むのに時間がかかった、というようなことを述べていたのでちょっと構えていました。

 

主な登場人物

落合昌夫 警視庁捜査一課の刑事、29歳。既婚で1児の父。

岩村傑 捜査一課の若手新米刑事、27歳。

仁井薫 バツイチの独身刑事、通称「ニール」。

宮下大吉 捜査一課の係長、「ゴリ長さん」。

森拓郎 捜査一課の古参、警部補。「タンクロー」。

 

大場茂吉 元捜査一課の刑事。50代半ば。

 

宇野寛治 北海道出身の20歳。空き巣を繰り返し少年刑務所→出所。

 

町井ミキ子 山谷で簡易宿泊所と食堂を経営・22歳。

町井福子 ミキ子の母。

町井明男 ミキ子の弟、20歳。やくざ。

※3人共、朝鮮人から帰化

 

以下、あらすじと感想をまとめました。

 

奥田英朗著「罪の轍」背表紙

 

奥田英朗「罪の轍」あらすじ

昭和38年8月の東京に、北海道から宇野寛治という男がやってくる。

 

オリンピックの前年で、東京では開発が進んでいた。

 

そんな中、荒川区で元時計商の資産家が殺される事件が発生。

そして、小学生の誘拐事件がおこる。

 

果たして宇野寛治は関わっているのか?

事件の真相は?

 

奥田英朗「罪の轍」感想

この「罪の轍」は私が感想を述べるまでもなく、とにかく読んでみて欲しいオススメの一冊です。

 

読みにくい箇所もありませんでしたし、いわゆる「中だるみ」もなく読了。

 

昭和39年の東京オリンピックが開催された年の前年の東京の様子がよく分かりました。

写真や映像でしか見たことのない、当時の昭和の風景が浮かぶようです。

 

時代というのもあるのでしょうが、皆さん当たり前のようにどこでもタバコを吸っていたのですね。

今となっては想像できない光景です。

 

語り手は、宇野寛治、町井ミキ子、そして落合昌夫。

 

落合昌夫の視点からは警察組織の実情が描かれており、社会派のミステリーだなという印象を受けました。

 

縄張りや階級、人間関係、捜査方針など、非常に興味深いものがありました。

一筋縄ではいかない部分もありますが、皆が全力で犯人を追う姿勢は逞しいです。

 

奥田英朗ミステリー小説・罪の轍、裏表紙

 

空き巣の常習犯である宇野寛治という男は、周囲の人間のみならず、子供からもバカ扱いされる…。

その胸中は理解しがたいものがありましたが、生い立ちや過去を知ると何とも言えない感情が生まれてきます。

 

また、しっかり者のミキ子も複雑な環境です。

 

死亡した父親はヤクザ。

母親はすぐにかっとなり騒ぎを起こすし、弟もまたヤクザ。

 

当時、朝鮮人ということで不利になるということが何となくではありますがイメージできました。

 

ソノシート?プラッシー?といった、耳にしたことのない単語が会話中に自然に出てきたのでその都度調べて「へえ~!」となったのも何だか新鮮でした。

 

作中の誘拐事件は、「吉展(よしのぶ)ちゃん誘拐事件」がモデルになったとのこと。

聞いたこともない事件でしたので少し調べてみましたら、なんとも痛ましい事件だったようで…。

 

罪の轍、これはかなり面白い本でした。

力いっぱい推薦したい一冊です。

 

最後に

www.matsuripan.com

 

前回読んだ「我が家の問題」がとても読みやすかったのですが、今回の「罪の轍」もするすると読めました。

 

この本は、中瀬ゆかりさんも推していたために間違いなく面白いだろうという予感はありましたが、期待していた以上の素晴らしい作品でした。

 

久々に、寝るのも惜しいほどに続きが気になって仕方がないという本に出会えました。

※寝不足の3日間でした。

 

結末はなんとなく想像できたのですが、物語の展開が気になる!というのはなかなかないことなので、自分自身に驚いた部分もありました。

 

奥田さん、すごいです。