岸本佐知子 エッセイ集「ひみつのしつもん」について
岸本佐知子さんのエッセイ集「ひみつのしつもん」は、2019年10月に筑摩書房から発売されたエッセイ集。
全222ページ。
「ちくま」に「ネにもつタイプ」として連載されていた作品の中から選び、加筆修正したものだそう。
(掲載は2012年4月号から2019年1月号まで。)
翻訳家・エッセイストとして活躍されている岸本佐知子さん。
今回はじめて彼女のエッセイを読んで、一気にファンになりました。
「ひみつのしつもん」以前のエッセイも、高く評価されている方なんですね。
岸本佐知子さんの存在を知るきっかけとなったのは、北村薫さんの本(後半で紹介します)でした。
その中で彼女の著書に触れていた部分があり、これはぜひ読んでみようと思って入手→積読本の中へ。
私は「翻訳本」に苦手意識があってあまり読んだ記憶がないのです(途中で挫折も多々あり)が、エッセイということで手に取りました。
積読本の中から「ひみつのしつもん」を選んだきっかけは、TBSラジオ「ACTION」のゲストに岸本さんが出ていたから。
武田さんとの会話が耳に残ったんです。
面白い予感がしました。
エッセイも翻訳も「受信」だとおっしゃっていました。
はて?
「受信」って、どーゆーこと??笑。
その後も岸本さんは、「アフター6ジャンクション」(こちらもTBSラジオの番組)のカルチャートークで推薦図書についてのお話もされていました。
今年読んでしびれた本2冊を紹介するという回だったのですが、落ち着いた声色で、まぁ~話術が巧み!
引き込まれてしまいました。
「歯」の七宝焼きのブローチを付けてのご登場だったようです・笑。
岸本佐知子「ひみつのしつもん」の感想
さて、エッセイ集「ひみつのしつもん」を読んでの感想です。
エッセイというより、短編集を読んでいるような物語性を感じました。
オチがちゃんとあって、くすくすと笑ってしまう。
岸本さんの着眼点が独特で、「そこ、掘り下げる?」というところを深く掘る。
妄想がひとり歩きしてしまうことはありますが、それをこうも面白おかしく言語化できるってすごい。
楽しそうだな、退屈しない脳内なんだろうな、と。
自虐ネタも多く収録されているのですが、卑屈にならないところが好ましかった。
どれもこれも面白いのですが、特に好きなのが「地獄」。
会社員時代に先輩と喫茶店へ入って繰り広げられた、奇妙な会話。
これはもう、カオス…。
また、1話ごとに描かれているイラストが秀逸。
内容に沿っていて、まさにこんな感じ!と膝を打つ感じなんです。
ユニークかつ見事なイラストに目を奪われてしまいました。
北村薫「本と幸せ」について
後半は北村薫著「本と幸せ」の紹介です。
「本と幸せ」は、2019年9月に新潮社より発売されたCD付の本。
全318ページ。
以下、簡単に本の内容を記します。
★エッセイ
愛猫である、ゆず君(アメリカン・ショートヘアだそう)の話題にほっこり。
有栖川有栖さんとの仲良しエピソードに笑ってしまった。
その他、北村さんの創作に対する思いや「本」に対する気持ちが、伝わってきました。
★自選短篇ベスト12+朗読CDのこと
ご本人が朗読したCDは、2019年6月にラカグでのイベントで収録されたものだそう。
「さばのみそ煮」の作中のでたらめ歌のメロディを声にしたくなった、とのことで思いがけず北村さんの歌声を聴くことができました。
教員をしていた経験がある北村さん。
朗読はお手物なのでしょうか?優しい声色は、心にしみました。
なんとも貴重な音源です。
★高校生のショートショート-7篇
「宇宙の会見」が特に良かった。
★1989年~2019年までの全著作リスト
北村薫さんは今年・2019年で作家生活30周年だそう。
私が彼の作品を初めて読んだのは15年くらい前、でしたでしょうか。
以前やっていたブログで知り合った方に薦められて読んだのが、はじまり。
そこから彼の過去の作品を読み、見事にハマりました。
この記事は、「スキップ」を再読したときのもの。
私はあまり再読しないタイプなのですが、彼の作品は再読もおすすめ◎
「本と幸せ」のあとがきによると、「ほんと、幸せ」を祈る声でもあると書かれていました。
本を読むことで、また次の本へとつながるのっていいですよね。