まつりパンライフ

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北村薫「リセット」あらすじと感想◎再読もおすすめ

北村薫著「リセット」の表紙画像

 

北村薫「リセット」について

北村薫著「リセット」は、2003年7月に新潮文庫から発売された長編小説。

全446ページ。

 

単行本としては、2001年1月に新潮社から刊行。

 

今から15年以上も前に、購入した本です。

引っ越しを機に書籍の整理をするのですが、「この本は手元に置いておこう、再読しよう」と大事にしてきた一冊でもあります。

 

「スキップ」「ターン」「リセット」は、時と人シリーズ・三部作と言われています。

今回は「リセット」のあらすじと感想の記事を書いてみようと思いますが、ネタバレなしの紹介です。

 

巻末には、宮部みゆきさんとの対談「時を超えて結ばれる魂」(「波」の再録)が収録。

お二方とも好きな作家さんです。

 

宮部さん、お話(インタビューの仕方)上手だなあと妙なところに感心してしまいました。

 

主な登場人物を簡単に。

 

水原真澄 戦時中、女学生として神戸で過ごす。物語の語り手。

田所八千代 真澄の同級生。社主の父を持つ。

弥生原優子 真澄の同級生。工学博士の父を持つ。

 

結城修一 八千代の同い年の従兄弟。田所の離れに母親と二人で暮らす。

 

村上和彦 入院中に過去を回想する、物語のもう一人の主人公。

 

北村薫著「リセット」の文庫版・背表紙

 

北村薫「リセット」のあらすじ

真澄が女学生として神戸で過ごしたのは、戦時中のことだった。

同級生である八千代さん・優子さんらと学ぶ中、戦争の色が濃くなり、次第に激化していく。

 

そんな中、真澄はある男性と出会い、惹かれあうが、残酷な現実が待っていた。

 

時は流れー

入院中の村上和彦が、少年時代につけていた日記をもとに、過去におきた「不思議な出来事」について語る。

 

リセット (新潮文庫) [ 北村薫 ]

 

北村薫「リセット」を再読しての感想

「リセット」は、時を超えてーという言葉がしっくりきます。 

奇跡ですね。

 

こんなことって、あると思う?

でも、ないとは言えないよね?なんて、誰かと感想を言い合いたいです。 

 

バッドエンドではないせいでしょうか、安心感があるという点で、再読にもおすすめの本です。

これは個人的な趣向なのですが、後味が悪い小説はどうも再読する気にならないんですよね・笑。

 

前半では、神戸のお嬢様たちの学生生活や日常が描かれているのですが、その優雅なことといったら!

社主の娘である八千代さん、工学博士の父を持つ優子さん。

 

フランスびいきの八千代さんは甘えん坊なところが可愛らしいし、優子さんに関しては、真澄いわく「不思議な人」ですが、私は度胸がある娘さんだなと思いました。

 

先生が絶句するような質問を皆の前でしてみたり、呼び出しを食らった際にちょっとした芝居を打って素知らぬふりをしてみせたり。なんて勝気なんだろう、と。

 

敗戦を疑うことなく過ごしていた日々は穏やかで楽し気で、こちらまで気持ちが若返るようです。

 

文庫版の長編小説「リセット」

 

しかし、少しずつ生活の中から物が消え、戦争が激化。

 

もんぺの着用や訓練が始まり、東京オリンピックが中止になり、小学校は国民学校と呼ばれるようになる。

あちこちでおこる空襲、そして疎開ー。

 

当時の日本の若者のそばには、常に死があったことがわかります。

身近な人が、戦争によって命を落とすのですから。

 

さて。

 

第二部・第二章から、面白い展開が待っています。

偶然が重なり、村上少年は30歳くらいのある女性と出会うのですが、その女性の正体が…!

 

村上少年と女性とのやり取りが、妙に大人びているのであります。

心温まる優しい言葉は、胸に響きます。

 

やがて中学生になった村上少年は、フライ返しを見て全てを思い出すー

と、ここまでにしておきますね。

 

時を超えた恋のお話。

何度読んでもドキドキしてしまう、ほんとうに素敵な物語。

 

最後に

前半では戦時中の話が軸になっていますから、悲しい出来事も描かれています。

自分の祖父母も、水原真澄と同じ時代を生きたのだと思うと胸が痛みます。

 

昭和7年生まれの祖母が「昔、学校で竹槍を持って訓練していた」、と話していたのを思い出します。

 

八文字屋書店の赤いブックカバー

 

仙台市の書店「八文字屋」のカバーが懐かしい。

 

時と人シリーズ・三部作の中ではこの「リセット」が好きです。

 

www.matsuripan.com

 

以前紹介した「スキップ」の記事のリンクはこちらです。

ちょっと切ない話。