真梨幸子「坂の上の赤い屋根」の登場人物
真梨幸子「坂の上の赤い屋根」は、2019年11月に徳間書店から発売された長編小説です。
文芸誌「読楽」に掲載されたものに加筆訂正し、刊行されました。
※掲載は2017年6月号から2019年1月号。
全367ページ。
今回も登場人物、あらすじ、感想を順にまとめてみます。
では主な登場人物の紹介から。
青田彩也子 高校在学中に両親を殺害し、無期懲役刑。
大渕秀行 彩也子の恋人で事件の共犯者。死刑囚。
鈴木礼子 法廷画家。大渕と獄中結婚。
橋本涼 轟書房文芸部の編集者。
小椋沙奈 小説家。
笠原智子 轟書房のカリスマ編集者。女帝。
市川聖子 大渕の元パトロン。轟書房の元編集者。現在はフリーライター。
真梨幸子「坂の上の赤い屋根」のあらすじ
2000年におきた「文京区両親強盗殺人事件」。
犯人は、名門女子校に通う実の娘である青田彩也子と、その恋人の大渕秀行。
その後裁判で、彩也子は無期懲役となり、大渕は死刑囚となった。
18年後の2018年ー。
事件をモチーフにした小説「坂の上の赤い屋根」を書くことになった沙奈は、取材のため、大渕と獄中結婚した法廷画家・鈴木礼子に話を聴くことにー。
黒幕は誰で、その企みとは? というあらすじです。
真梨幸子「坂の上の赤い屋根」の感想
予防線をはりながら読んでいたつもりなのに、最後の最後まで気を抜けない作品でした。
感想としては、今回もエグイ内容盛りだくさんだったな、と。
前回読んだ「三匹の子豚」もなかなかでしたが、今回もドロドロ、かつ嫉妬の嵐です。
彩也子と大渕の関係性がそもそも奇妙なのですが、真梨幸子さんの作品ということで…
そういう性癖もあると思えば面白いな、と楽しめるようになりました。
ところで、何冊か彼女の作品を読むうちに、心構え?のようなものを意識するようになりました。
食事前の読書…これは、彼女の作品はNGですね。
不意に現れるびろうなシーンによって、見事に食べる気が失せます・笑。
(食後もちょっと避ける傾向にあります…)
あとは、時系列を整理しながら読むのも大事かなと思います。
過去の出来事と現在の状況を、織り交ぜながら展開されていくので時々ごちゃまぜになります。
しかしながら、ちびちびと読むよりも一気に読んでしまう方がいいと思います。
流れに乗ることができるので。
あえて誰の視点からの章なのかを、明言せずに描かれているというのも特徴です。
ですので、謎が多いまま読み進めていくことになります。
登場人物に関して言うと、この人とこの人がここで繋がっていた…!
というのがたくさんあるので、真梨さんの作品はメモを取りながら読んでいます。
おそらく「こうなんだろうな~」と思っていたことが覆される真相が待ち受けていました。
ここまで考えが及ばなかった、という結末でした。
最後に
真梨さんの作品は、グロテスクな描写が過ぎるという箇所もありますが、やはり中毒性がありますね。
初めて彼女の作品を読んだのは「初恋さがし」でした。
本作も、人間の嫉妬が巧みに描かれている作品でした。
いつもながら本の装幀が麗しい!(内容はともかく・笑)。
この作品は「文京区」が舞台として出てきます。
あくまでもフィクションなのですが、同じ区でありながら、立地によるヒエラルキー構造というものは本当にありそうだなと思いました。
どの区でもこういったことはあるのかもしれません。
確かに、谷底の地よりも高台の土地に魅力を感じてしまいます。